竜浪道 ~リュウロード~

めっぽう強いが小さな男リュウの格闘旅物語
日向 真詞
日向 真詞

【主な登場人物紹介】

公開日時: 2022年5月21日(土) 08:15
更新日時: 2022年5月25日(水) 18:30
文字数:4,032

5月27日公開の第二章ヒゴ編を前に、主な登場人物の紹介をどうぞ!

リュウ


 主人公。本名不詳。出身地不詳。年齢は21歳。男前だが背が低い。脚はかろうじて「胴よりは長い」と自分で言っている。

サツマにてヤゴロウどん神社の巫女ネネより「飛成 竜」の名を与えられ、以後はこの名を本名として使っている。


 シュウに語ったところによるとサツマに来る前はどこかで「番人」をしていたらしい。

「泥棒が来たら、もう二度と来たくなくなるくらい徹底的に叩きのめしてた」(本人談)


 めっぽう強いが「武道はちゃんと習ったことがない」(本人談)。特に蹴りなど打撃系が得意。鋭角に落とし込むローキックが非常に効く。

「生きているヤゴロウどん」との闘いでは普段とは別人のような鬼気迫る笑顔で骨をへし折るなど、残酷な攻撃をすることがあった。


 食いしん坊で美味しいものに目がない。飯粒を飛び散らせながら丼飯をかき込んだり、きな粉や黒蜜をこぼしながら餅を食べる、手に付いた甘いたれをべろべろなめるなど行儀が悪いが、常に大変美味しそうに食べるので「可愛らしく思う」(オオヒト談)


 正直で素直ではあるがマイペースで、悪気なく周りを振り回す。カッコ良いか悪いかにこだわる傾向がある。尻が見えることを異常に嫌がる。人の顔を何かの生き物に見立てる失礼な癖がある。


 密航でサツマに流れ着き、居酒屋きばいやんせ(通称きばい屋)でシンカイ・ギョウという自称用心棒の男と諍いになり、ひざ蹴り一撃で倒したことからヤゴロウどん祭りの闘技戦に出場させられることになる。


 闘技戦では一回戦はかかと落としで秒勝ち、二回戦も逆片エビ固めで圧勝、決勝戦は途中で意識を失うも最後は宙返りからの延髄切りで優勝した。


「生きているヤゴロウどん」との決戦も両者ノックアウトながら実質上の勝利を得て「神様を倒した男」と信望者ファンのあこがれの的になる。


 しかし嫉妬し憎悪する者、また「神を倒した英雄」を利用しようとする者などから身を遠ざけ、人としての修業を積むためサツマから「追放」され、シュウと共にヒゴへ旅立った。




シュウ


 本名シュウヘイ。神様ヤゴロウどんの依巫よりまし(神が乗り移る人)。

「僕がヤゴロウどんの中のひとやねん」(本人談)

 サツマ生まれでナニワ育ち。大学は西のミヤコ(京都)。身長が高く、神様ヤゴロウどんが乗り移っている時は2メートル20センチくらいある。神様が離れると少し身体が小さくなるが、それでも2メートルは超している。


 とても穏やかで気遣いができる優しい性格。追放されるリュウを思いやって「僕と一緒に旅、せえへん?」「よかったら僕と一緒に来てくれへん?」と自分から頼むような言い方で同行を希望した。


 ゆっくりとしたカンサイ弁で話す。サツマ生まれなので昔ながらの薩摩の方言を理解はできるが、話すことは難しいらしい。


 2年前の春に、サツマに住んでいた母方の祖母の葬式のためサツマに戻ったが、巫女ネネより神様ヤゴロウどんの依巫になることを頼まれ承諾。以後は神社の奥の森の中に隠れ住んで、きこりをしながら過ごす。


 年に一度のヤゴロウどん祭りの夜だけ闘技戦の優勝者と闘うため、ヤゴロウどんの魂に身体を貸していた。


 しかしリュウとの闘いの後はヤゴロウどんの魂が少し残っている状態が続いているらしく、時折強い光を放つ眼になり、ヤゴロウどんの声で話すことがある。




きばい屋店主


 居酒屋「きばいやんせ」の店主。皆からは「きばい屋」「きばい屋さん」と呼ばれ親しまれている。


 空腹で金も持たないリュウに特製大盛丼と鶏飯をご馳走してやり、そのまま住み込みでおかわり自由のまかない付きにて雇ってくれた太っ腹な大将。


 リュウのことを実の息子のように大事に思ってくれており、リュウが追放される時にも「ここサツマがリュウさんの故郷だと思えばいい。わしの店があんたの家だと思えばいい。だから早く修業を終えて帰って来てくれ」と言葉をかけてくれた。


 若い頃は店の仕事に打ち込む余り家庭を顧みなかったため、小さな息子を連れて妻が実家に帰ってしまい、その後藩外へ転居したため生き別れになった。


 しかしリュウが闘技戦出場のため神社へ移ったと同時に、成人し料理人となった息子が帰って来てくれて、以後は親子で店をやっていくことになった。



老婆巫女ネネ


 ヤゴロウどん神社の巫女。齢百を超えているような老婆だが、畑で野菜を作り早朝からきばい屋やカントクさんの店へ届けるなど矍鑠かくしゃくとしている。


 親しい人には「おネエちゃん」と呼ぶよう自ら強制しているが、オオヒトからは「ネネ様」氏子らからは「おネさぁ」と呼ばれている。


 先々代の宮司の姉で、オオヒトから見ると曾祖伯母にあたる。少女のころから“不思議な力”を持っており、神職のなかでも神の声を聞けるのはネネだけである。

 

 触れただけで跡形もなくケガを治したり、薩摩の方言を共通語に変えて相手の耳に届けることもできる。





オオヒト


 ヤゴロウどん神社の宮司の息子であり、神社の跡取り。


 15歳の少年で少女と見まごうような美貌。老婆巫女ネネの親族で不思議な力も受け継いでおり、手を当てることで心身を癒すことができる。


 闘技戦でリュウの世話係をしたことがきっかけでリュウを慕っている。


 リュウも「お前は頭もいいし度胸もあるけど、神社の跡取りだからって頑張りすぎるこたぁねえんだぜ」とオオヒトのことを可愛がっている。




神様ヤゴロウどん


 ヤゴロウどん神社にまつられている闘いの神様。

「大昔に中央政権が支配を強めてきた時、この地の民たちが抵抗し、闘った時の首長がヤゴロウどんだったという話だ。とにかくでかくて強い、そして心優しいんだ」

「一年半にわたる中央政権との戦いで最後は負けてしまったが、ヤゴロウどんの魂を神様として崇め奉り、鎮める祭りを毎年やって五穀豊穣、健康長寿を祈るんだよ」(きばい屋店主談)


 二年前の祭りの夜にシュウの身体に乗り移って降臨し、闘技戦の優勝者サコウをあっという間に倒した。


 翌年もサコウだけでなく無断で挑んで来た選手三人を「虫でも追い払うかのように」一撃で倒した。


 リュウとの死闘で手足の指、ひざの骨を折られ、頭突きでご神体である面までも割られるが、ヤゴロウどんもリュウの背骨を折るなど両者ノックアウトで引き分けとなる。


 試合後に老婆巫女ネネの力でヤゴロウどんの声を皆に届け、そのなかで「先程の闘いはわしが負けた」と認めたことでリュウが「神様を倒した男」となった。




サコウ


 闘技戦でリュウと決勝戦を戦ったプロのキックボクサー。長身を生かしたハイキックが得意技で「黄金の斧」と称えられている。

 子供の頃はいじめられっ子で、皆を見返したくて中学からキックボクシングを始め、高校生でプロデビューするほど強くなった。


 闘技戦で初優勝した時にヤゴロウどんにあっという間に負け、以来3年越しで雪辱を晴らそうとしたが、決勝戦でリュウに負けたためヤゴロウどんとは闘えなかった。


 ヤゴロウどんに首を絞められ負ける寸前だったリュウに「闘え!」と叫び「誰よりも強いくせに!俺よりも、ずっとずっと強かったくせに!首絞められたぐらいで負けるんじゃねえ!」と檄を飛ばした。


 試合後、老婆巫女により「王者の若者ともぜひ闘いたかった」「小さな体の男が倒れる寸前に放った蹴りは、王者の男の魂が乗り移った見事な蹴りであった」とサコウ自身をヤゴロウどんから称えてもらえたことで報われた思いになり、涙を流していた。



カントクさん一家


 「ら~めん行進曲〇〇(まるまる)」の店主夫妻とそのまな息子タケル。


 店主のカントクさんは昔劇団で俳優と脚本、演出まで総監督をこなしていたため、現在も演劇仲間からカントクという愛称で呼ばれている。謙虚で誠実な人柄で、優しく温かみのある味わいの美味しい料理を作る。


 奥さんの親御さんはサツマ人だが本人はナニワ育ち。東のミヤコ(東京)で演劇を通じてカントクさんと出会い、結婚した。

 朗らかで笑顔が魅力的なムードメーカー。機関銃のような速さで勢いのあるカンサイ弁をしゃべり、一人でボケて一人で突っ込むなど漫才師のようなトーク力を誇る。


 息子タケルくんは小学生低学年。はにかみ笑顔が可愛いシャイな性格だがお店の手伝いをよくしており、時には母であるカントクさんの奥さんに優しく突っ込みを入れるなど、しっかりしている。リュウからも「りっぱな子ども店長だ」と感心されている。


 闘技戦の夜、リュウとシュウがきばい屋店主に連れられて来店した際、大盛特製ラーメンに焼き飯、ポテトサラダをご馳走になった。


 リュウの血と汗が染みついた粗品タオルはその後「お宝もの」となり、リュウとタケル、さらにヤゴロウどんの魂も写った写真と共に店に飾られている。



ヤッさん


 ヤゴロウどん祭り闘技戦の当番委員長。シンカイからの推薦を受けてリュウに代理出場を依頼する。

 しかし港でリュウが落とした財布(祖父の形見)をゴミと間違えて捨てたために、リュウに4の字固めをかけられた。


 闘技戦では責任者として権限を持つものの、リュウの命が危ない時にタオルを投入しようとするとそのタオルに「お葬式広告」や「殺し屋広告」が入っていたために投げられなかったり、主審や老婆巫女に試合を止めるよう提言しても無視されるなど、あまり責務を果たせなかった。


 自身もきばい屋の常連のひとりで、下手な替え歌を作って他の常連たちに酷評されるが、そのお人よしさゆえに皆から愛されている。



シンカイ・ギョウ


 きばい屋に居座っていた自称用心棒。ヤゴロウどん祭りの闘技戦に出場する予定だったが、リュウにひざ蹴り一発で倒され負傷し、出場できなくなる。


 逆恨みをして仲間たちと共にきばい屋の作る祭りの弁当に下剤をいれようとしたり、闘技戦ではリュウへの誹謗中傷を行い聴衆を扇動して一時は窮地に追い込むが、オオヒトに論破され逆上し自滅する。さらにリュウに頭を踏まれてぶっ倒れた。


 顔が深海魚に似ており、怒ると顔が真っ赤になるため、リュウからは深海魚またはゆで蛸扱いされていた。

 


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