竜浪道 ~リュウロード~

めっぽう強いが小さな男リュウの格闘旅物語
日向 真詞
日向 真詞

【主な登場人物紹介】ヒゴ編

公開日時: 2023年10月6日(金) 19:00
文字数:10,284

 次回からの第三章「飛竜十番勝負編」を前に、主な登場人物の紹介をどうぞ!


 リュウ


 主人公。本名不詳。出身地不詳。年齢は21歳。めっぽう強くて男前だが背が低い(171cm)。美味しいものが大好きな食いしん坊。

 サツマ藩(現代の鹿児島県)にてヤゴロウどん神社の巫女ネネより「飛成竜ヒナリ リュウ」の名を与えられ、以後はこの名を本名として使っている。


 【第五十話 親愛なる重荷】で自らの過去をシュウに語っている。


「俺の父親は妻と子どもがいるくせに、出張先で出会ったおふくろをだまして俺を産ませた」


 その後母は死去。母方の祖父母に引き取られるが「ただの厄介者」扱いをされていた。小学校入学前に父親が現れるが、家業である空師(木の特殊伐採技能を持つ職人)を継がせるためだけにリュウは引き取られた。

 小学校~中学校もろくに通わせてもらえず、家業においても暴力中心の虐待指導を受けながら育った。


「見かねた腹違いの兄貴が父親から俺を引き離してじいちゃんに預けてくれたけど、そのじいちゃんも死んじまった…もう俺の居場所がなくなったから藩を飛び出した」


 その後密航でサツマに流れ着き、神社の奉納闘技戦に出場することとなり、優勝。闘神ヤゴロウどんとの闘いにも実質勝利する。


 人間としての修業を積むためサツマを追放され、ヒゴ藩(現代の熊本県)にシュウと共にやって来た。虎拳プロレスの代表ジンマからスカウトされ、プロレスラーとしてデビューすることになった。

 その強さと超人的な身体能力、端正な容貌と天然ボケな性格で人気を集めている。

高級料亭「肥後ほまれ」のオーナー・コトカや女子プロレスラーのあんり、ナツキからも好意を寄せられるが、異性と関わることがほとんどなかった特殊な成育環境で育ったため恋愛に疎く、リュウは彼女らを恋愛対象として意識することはなかった。

 しかし、ヒゼンで偶然助けた少女・マリエに初めての恋をし、周りからは「ストーカー」「変態」と揶揄されるくらい恋愛感情を駄々洩だだもれにしている。


 虎之助の復帰までの間、「飛竜十番勝負」として空手家のゲンサイをはじめとした10人の強豪たちと一騎打ちで闘うことになる。


【余話】

 虐待されたトラウマのため父親とそっくりな自分の顔を嫌悪しており「鏡を見ると吐きそうになる」。父親のことを思い出すと過呼吸の発作も起こす。

 また、闘っている時に呼吸困難になるような攻撃を受けると、相手の骨を折ったり内臓をえぐるような残忍な攻撃を返すことがある。

「俺の息の根を止めようとすりゃ、こうなるって事だ。よく覚えとけ」




シュウ


 幸田秀平コウダシュウヘイ。神様ヤゴロウどんの依巫よりまし(神が乗り移る人)でリュウの親友。

 サツマ生まれでナニワ(現代の大阪)育ち。大学は西のミヤコ(京都)。身長が高く、神様ヤゴロウどんが乗り移っている時は2メートル20センチくらいある。神様が離れると少し身体が小さくなるが、それでも2メートルは超している。


 とても穏やかで気遣いができる優しい性格。ゆっくりとしたカンサイ弁で話す。


 【第五十話 親愛なる重荷】でシュウも自らの過去をリュウに語っている。


 病弱だったため、両親、弟妹と離れてひとりだけサツマの祖母に預けられて育つ。運動ができない代わりに勉学にいそしむが、親から優秀な成績のみを認められてナニワの寮付き中高一貫校に入学させられる。大学も全国二位の優秀な国立大学に入るが、親の愛情は受けられぬまま就職先も親によって決められる。大学卒業寸前に両親弟妹全員が旅行先で事故死してしまう。


「その時、みんなで家族旅行に行ってたんや。僕だけ知らんかった。僕だけ置いて行かれてた。僕も家族やのに…。僕が行ったことない家族旅行に親と弟妹で楽しく行ってる時に事故にあったんや。…また僕だけ置いてけぼりにされた」


 両親たちの葬儀直後に祖母も亡くなり、天涯孤独となる。墓に皆の遺骨を納めるためにサツマへ戻った際に、巫女ネネより神様ヤゴロウどんの依巫よりましになることを頼まれ承諾。3年目の秋に闘技戦優勝者であるリュウとヤゴロウどん(身体はシュウ)が闘い、それがきっかけでリュウと親友になり共にヒゴへやってきた。リュウがプロレスラーとなってからはマネージャーを務めている。


【余話】

 リュウと余りに仲が良いので、カワカミから「もしかしたらリュウさんとシュウさんは“好い仲”なのか」と思われていたが、「僕、リュウのことは大好きやけど恋人にはなられへんわ。せっかくやけどリュウごめんな~」と冗談を言い、大学時代に付き合って別れた彼女のことが忘れられないという事を打ち明けている。



カワカミ


 川上恭太郎カワカミキョウタロウ。サツマヤゴロウどん神社の分社にあたる、ヒゴのオオヒト八幡神社の禰宜ねぎ

 パーマのかかったロングヘアーで楽器演奏が趣味というちょっと風変わりな神職。

 中古車の改造も得意(実家が中古車販売業)で、シュウが神様ヤゴロウどんの依巫よりましを務めた謝礼にもらったキャンピングカーを作ってくれたのもカワカミであった。


 ご先祖に有名なプロミュージシャンが居り、仲間とロックバンドを組んで人気を博していたが、内乱の時代にロックの魂を唄った曲が「危険思想を煽る」として中央政府に弾圧され、歌詞も消し去られてしまった。

 カワカミはその先祖に憧れて自身もバンドを組み音楽の世界に入るが挫折、親からも勘当される。ヒゴの実家にも入れてもらえずサツマを彷徨さまよっていた時に、ヤゴロウどん神社の巫女ネネと出会い神職の道へ進む。


 ヒゴのオオヒト八幡神社を任されてからは、神楽かぐらの様に神前に演奏を捧げるようになった。

 音楽の神・弁財天の加護を得るようになり、そのピアノ演奏と歌で亡くなった女子高校生の魂を救ったこと(第六十七話~六十八話)もある。

 リュウとシュウを神社に住まわせて、得意料理をふるまったり何かと世話を焼いていた。

 また、リュウがプロレスラーとしてデビューするにあたり、入場曲をご先祖が残した曲「ダイナマイトに火をつけろ!」にするよう提案し、採用される。また、その入場曲が縁でコマチと出会い、熱愛の末結婚することとなった。


コマチ


 紀月キヅキ小町コマチ。透き通った瞳の美女。書道と華道の心得があり、オオヒト八幡神社の御朱印を書くようになり大評判となる。


 コマチの先祖がカワカミの先祖が組んだバンドのファンで、当時のLIVEテープや音楽誌の切り抜きなどを大事に保存していた。遺品整理の際にコマチがそれらを発見し、自身もたちまちそのバンドのファンになる。

 リュウのデビュー戦をヒゴくまねっとでたまたま観た際に、入場曲として「ダイナマイトに火をつけろ!」が流れたので驚き、次の試合会場へ聴きに来た。すると隣の席に偶然カワカミが座っており、入場曲が止んだ後も小声で歌を歌い続けているコマチに驚き「その歌…!この曲の歌詞ですか?なんでご存知なんですか?!」と話しかけたことがきっかけで意気投合。逢瀬を重ねるうちに深く愛し合うようになり、リュウとシュウも驚くほどのスピード婚に至った。

 二人の結婚に従ってリュウとシュウは神社を出て虎拳プロレスの寮に移った。カワカミと同居後、コマチは華道の心得を活かして神社内に花を活け、参拝客の心を和ませている。また神職としての資格を取るため、修業を始めている。


【余話】

 カワカミとコマチが出会ってから短期間で結婚したことから「オオヒト八幡神社の御朱印には縁結びのご利益がある」と評判になり、御朱印授与希望者が殺到している。また御朱印の文字に「捲土重来けんどちょうらい」があることで「一度フラれた相手でも再アタックすれば恋が叶う」との噂も。



ジンマ


 神馬秀和ジンマヒデカズ。虎拳プロレスリング代表であり、メインレフェリーとリングアナも兼任している。

 ヒゴの託麻大学で学生プロレス研究会に所属していたが、交通事故により左半身麻痺の重傷を負い、レスラーになる夢を断たれた。

 しかしその賠償金を使ってプロレス用のリングを購入し、虎拳プロレスリングを立ち上げる。リハビリを必死で続けながらレスラーとしての再起を図るが心臓の病気を発症し、プロデューサーとしての活動に重きを置くようになった。


 虎拳プロレスの看板レスラー虎之助が負傷欠場となり、代わりにメインを張れるレスラー候補を探すため、故郷サツマのヤゴロウどん神社闘技戦を観戦した際にリュウを見出した。


「リュウさん、頼む!プロレスラーとして、俺の団体のリングに上がってくれ!」


 ジンマは必死で懇願するが、プロレスを見たことが無かったリュウは嫌がって断り続ける。馬刺しを振る舞って懐柔を試みるも不発。

 しかしシュウから「だってリュウ、カッコええやん。こんなに強くて凄い人が“真剣にプロレスをやる”としたら、みんな絶対夢中になると僕も思うわ」と勧められ、また虎之助からも「ジンマが必死になってこの危機を乗り越えようと頑張ってるんで、どうか力を貸してもらえませんか」と頭を下げられ、リュウは虎拳プロレスのリングに上がることを決意する。


サツマの神に捧げる闘技戦の覇王がヒゴの地へ舞い降りた!めっぽう強くて男前、この男に惚れないヤツがいるものか!?問答無用の喧嘩師!ヒナリ・リュウ選手──!


 リュウが恥ずかしがって入場を渋るほどの賛辞を込め、リュウを称えるコールをするのをジンマ自身も毎回楽しみにしている。


【余話】

 学生プロレスラー時代のリングネームは「ケロ太郎」。伝説の名リングアナウンサー田中ケロ氏を尊敬しているので本人はこのリングネームを大変気に入っていた。



虎之助


リングネーム:加藤虎之助カトウトラノスケ(ヒゴの英雄である加藤清正の幼名にちなんでいる) 本名:加藤泰博カトウヤスヒロ。虎拳プロレスの看板レスラー。さわやかな好青年で、見栄えのする各種スープレックスを使いこなせる華のあるメインイベンターであったが、トウドウとの試合で復帰まで半年もかかる重傷を負った。今はリハビリをしながら徐々にレスリングの練習も再開しつつある。


 託麻大学のプロレス研究会OBでジンマとは同期生。お互いに親友で良きライバルでもあったが、ジンマが事故に遭って半身不随となってからは代表としてのジンマを支えることに心を尽くし、リュウにも頭を下げて虎拳と契約してくれるよう頼んだ。


「大好きなプロレスに出来る限り関わっていきたいというあいつの気持ちがみんなわかってるんで、僕も大学卒業してからはしばらく普通のサラリーマンやってたんですが、ジンマが頑張ってるのを放っておけなくて。退職してバイトしながらプロレスラーとして何とかやって来たんです」


 また、リュウに対してもプライドを捨てて本心をさらけ出し、闘う覚悟を示した。


「正直に言います。僕は、リュウに嫉妬しています」

「その身体能力、そのスピード、その技の威力…今の僕ではリュウの強さには敵いません。でも復帰戦までの期間で、僕は必ずリュウよりも強くなってみせます。絶対にリュウに勝ちます!


【余話】

学生プロレスラー時代のリングネームは「蚊トンボ太郎」。理由は入学当初はすごく痩せていたため、先輩から名付けられた。

「僕は嫌でしたが格闘技の古典漫画で『蚊トンボを獅子に変化(かえ)る』って名言があったんで、それを自分の励みにしました。強くなって獅子に化けるぞって。だから次のリングネームは獅子之助にしたんですよ」

 この名言の出典は「グラップラー刃牙(作:板垣恵介) 」範馬勇次郎の台詞。



サナダ


真田旭サナダアキラ。託麻大学のプロレス研究会OBで虎拳プロレス最年長選手。任侠者的な風貌で、言動も諧謔かいぎゃくや皮肉の効いたものが多い。虎之助たちと違って定職に就いており(どうやら建築関係らしい)、虎拳プロレスの試合にはたまにしか出場しない。


「渋さはあるが派手さ…いわゆる華がないからキャリアが長くてもスターにはなれない。だが関節技をはじめとした寝技は誰も敵わないし、ガチの勝負ならサナダが一番強いだろう」


 トウドウがこう語るように、かなりの実力者。月に一度後輩たちに関節技を指導しているが、その厳しさと激しさのため「あいつら覚えが悪いから全然上達しねえがな」(サナダ談)

 食通でリュウ同様美味しいものを食べるのが大好き。シンヤと同じソープ店に通っているらしく、店の入り口で出くわしたシンヤを「なんで俺と同じ店に来るんだ」と理不尽に殴ったこともある。

 癖のある冗談や辛辣な意見を口にすることが多いが実は人の心の動きに敏く、リュウに嫉妬し取り乱す虎之助をその言葉で諭した。


「虎之助。ジンマはお前が虎拳のメインとして帰って来るのを心の底から待ち望んでる。デビュー戦で入場順を一番最後にしながらも、けして赤コーナーからはリュウを入場させなかったジンマの気持ちを汲んでやれ」

「メイン試合の赤コーナーから最後に呼ばれて出てくるトップレスラーは、ジンマには虎之助しか有り得ねえんだぞ」


 リュウからマリエを紹介された後、ユージがマリエのことを可愛いといった際には「可愛いか…たしかにな。だが、ありゃかなりの手練てだれだぞ」と謎の言葉を口にしている。



シンヤ


 菊池眞矢キクチシンヤ。体重135㎏の巨漢レスラー。ヒゼンの大晦日エリミネーションマッチでは相撲体型部門で出場した。虎拳プロレスでは虎之助に次ぐNo.2の位置にいるが、後輩のケイイチとユージからはその体型をイジられるなど余り尊敬はされていない。ソープ通いが趣味で胸と尻が大きいソープ嬢をよく指名するらしい。

 相手を力と体重でねじ伏せるスタイルのレスラーだったが、リュウの影響で「単なるパワーファイターじゃなく、もっとインパクトのある闘いがしたい!」と言い出した。


「俺の体型でも、いや!俺の体型だからこその凄い蹴り方を教えてくれ!相手が引いて、お客さんはドッと沸くような蹴りが欲しいんだ!」


 リュウの指導を受け、ぶちかましフライング・ニールキックを我が物とする。以後、シンヤの必殺技となった。



ケイイチ


 川端慧一カワバタケイイチ。身長はリュウより4㎝だけ高い175㎝と低めだが、闘志を前面に出すファイトスタイルで「顔見えなくても全身で怒りを表現できてるね。いいレスラーだね!」と女子レスラーのナツキからも評価されている。リュウ直伝の掌底で反則攻撃に立ち向かう、熱いファイトで人気上昇中。シンヤ同様託麻大学のプロレス研究会出身でユージと同期。



ユージ


 貴船優治キフネユウジ。身長はケイイチより7㎝高い182㎝。しゅっとした醤油顔でイケメンと言えなくもないが、あっさりしすぎて印象に残らないため、さほどモテない。シンヤ同様託麻大学のプロレス研究会出身でケイイチと同期。

「クールに見えるけど、やられてる時の雰囲気がじっと耐えて機会を伺ってるような不気味さも感じさせるね。目が離せないよ」とナツキから評価されており、浴びせ蹴りなどリュウ直伝の蹴り技を駆使し、静かなる闘志を燃やしている。



【余話】

 ケイイチとユージはお尻を見せたりして笑いを取る「明るく楽しいプロレス」で子どもたちに人気だったが、リュウに刺激を受けてストロングスタイルに転向。シュウとマリエが子供たちと遊ぶコーナーに、新人のオサムとミノルが参加することで少しだけお笑いプロレスの要素は残している。


★モデルにさせてもらったレスラー


 サナダ:藤原喜明 シンヤ:橋本真也 ケイイチ:山田恵一(現:獣神サンダー・ライガー) ユージ:船木優治(現:誠勝)



トウドウ

 

 藤堂高虎トウドウタカトラ。現在はフリーの悪役レスラーだが、元々は大手の団体に所属する、関節技を得意とするサナダのような存在だった。しかし息子に自分の真の強さをわかってもらいたいがゆえに、試合中についやりすぎて対戦相手をケガさせてしまい、首になった。

 虎拳プロレスでも看板レスラーの虎之助に重傷を負わせ契約解除通告を受けるが、ジンマに抗議中たまたま居合わせたリュウと喧嘩になる。しかしそれがきっかけで二人はお互いの強さを認め合い、リュウの希望によりデビュー戦で対戦することとなる。その後の再戦でも観客の予想を良い意味で裏切り続ける展開の好勝負となり、リュウと闘ったことでトウドウの人気も上がった。再戦の後、二人はこんな会話をしていることからも、互いが良き好敵手であることを認め合っているのがうかがえる。


「うるせえ!筋書き破りばっかりしやがって!」

 怒鳴りながらもリュウはニヤリと笑って言った。

「だから、てめえとるのは面白おもしれえんだよ」

 トウドウもニヤリと笑った。

「俺もだ。リュウとるのが一番面白い」




ナツキ


 河井夏希カワイナツキ。ナガオカ藩(現代の新潟県)のプロレス団体朱鷺ときプロレスの実力派女子レスラー。長身でグラマラスな肉体と強い目力のある瞳が印象的。朗らかで豪快な性格で人懐っこい。リュウの試合をWEBで観てぞっこん惚れてしまい、依頼されていたあんりとの試合を無理やり虎拳主催興行に組み込むことで、リュウと同じリングに上がる機会を得た。


 リュウとトウドウの試合では自ら志願しセコンドに付き、壊れた観客席に挟まれて動けず、あやうくリングアウト負けになりそうなリュウに、


「リュウ!そんなもんぶっ壊して抜け出しな!」

「え?この椅子壊していいのか?」

さっさとぶっ壊せ!お客さんはリュウの負けるとこなんて見たくないよ!早く戻って!


とアドバイスして窮地を救った。また、試合後のインタビューでナツキへの感謝を述べたリュウに

「そうだよリュウ!あたしのおかげで勝てたんだよね?だからさぁ、お礼にあたしの彼氏になってくんない?」と迫るが、

「無理!彼氏なんて絶対無理だ!それは勘弁してくれ──!!!」と速攻で断られる。


 その後、料亭肥後ほまれでの打ち上げでオーナー・コトカが「私はリュウさんのスポンサーというより、マブダチなんです」とナツキに張り合おうとしたところ、


「じゃあさ、あたしもリュウのマブダチにしてよ!彼氏は絶対無理ってフラれたけど、考えたら“まずはお友達から”スタートするのが普通だよね!もう友達にはなってるからさ、ランクアップして親友のマブダチってことで!よろしくね」


と、リュウへの思いを諦める気はさらさらないことを宣言した。



あんり


 甲野コウノあんりアンリ。カンサイのプロレス団体エンジェルプロレスの女子レスラー。150㎝、48kgの小柄で細身の身体でぱっちりした目の可愛い顔をしたロングヘアーの少女。フリルの付いたコスチュームで強さよりもアイドル感を売りにしている。


「あんりちゃんはな、負けっぷりというか、やられっぷりが凄いんだ!」

「あんなにちっこい細い身体で、ゴツい相手レスラーの技を全身で受ける!」

「ふらふらのボロボロになっても何度も立ち上がって、またやられる。そこがいいんだよなー」

と、シンヤたちからも大人気であるが、大人が少女に暴力をふるっているような印象を受けたリュウは、その試合を観ていられない気分だった。


 あんり自身も「私は弱いから対戦相手にまともに闘ってもらえなくて…プロレスの技というよりいじめみたいな…顔を百面相みたいにいじりまわされたり、鼻や口に指突っ込まれたり…あと、わざと胸やお尻ばかり叩かれたり…」

「フォールされる時や寝技掛けられる時も…わざと大股開きでめられたりして…私の恥ずかしい恰好をお客さんに見せつけるようにされるんです」と嫌がっているが、ナツキだけはあんりを対戦相手として対等に扱って手を抜かなかったことが嬉しかったと言った。


 また、団体の社長からスポンサーの機嫌を取るために「デート会食」をするよう強要されているのを不満に思っていると暴露している。



コトカ


 泗水古都華シスイコトカ。料亭「肥後ほまれ」のオーナー。リュウを好きになった事から虎拳プロレスのスポンサーとなり、夫との離婚が成立後はリュウに夫になってくれと迫るなど、熱烈アタックを繰り返している。


 200年以上も歴史がある老舗高級料亭の一人娘として生まれた。傾きかかった店を守るために20も年上の男と結婚させられ、挙句に夫は若い女に貢ぐために家宝を売り飛ばすなどしたため、離婚を言い渡し夫を追い出した。その後弁護士のレンによって無事離婚が成立。


「私ね、リュウさんのことがほんとに好き。離婚もできたから誰はばかることもなく好きって言えるわ」

 恋愛に疎いリュウが「あ~あ。女の人ってえのは難しいなぁ…そもそもな、何でみんないきなり彼氏になってとか、ま…間夫とか、夫とか。男の立場?を決めたがるんだよ?」と困惑すると、

「リュウさんが大好きな、いきなり団子があるとします」「でもその特別ないきなり団子は、名人のお菓子職人さんが一生にたった一個しか作りません」「リュウさん、これは例え話よ。誰もが夢中になって欲しがるものは、誰よりも早く予約をしないと手に入らないってこと」と男女関係をお菓子に例えて教えたりした。



レン


 有吉漣アリヨシ レン。弁護士。料亭肥後ほまれの顧問弁護士。美女と見まごうばかりの美貌と優秀な頭脳の持ち主。リュウとシュウが山越えでヒゴに入藩した際に、レンが男たちに追われているところに遭遇し「おいシュウ、女が複数の男に追いかけられてるってことは…助けてやらなきゃな」とリュウが崖を飛び降りて男たちの前に立ちふさがり、レンを逃がして男たちをあっという間に倒した。

 阿蘇の温泉で再会し「あんた、男だったのか。いやぁ驚いたぜ」とレンが男性であったことにリュウもシュウも驚愕する。その後レンが自ら希望して虎拳プロレスの顧問弁護士になった事で、リュウの契約など深く関わりを持つことになった。


 契約に必要な身分証明書確認のため、レンはリュウの本名や出身地を調べると共にサツマに来るまでの経緯も知ることとなった。その調査の中で巫女ネネが飛成家の養子としてリュウを迎え入れた事や、リュウの「兄」に協力を請うたことなどが【第三十八話 Hey far away Brotherで語られている。


マリエ


 桐野真理恵キリノマリエ。小柄で童顔の18歳。寝顔が子供の様にあどけない。会社を経営していた父親を亡くし母も寝たきりになったため、母の介護を叔母に託し故郷のチクゼンを離れてヒゼンで住み込みで働いていた。しかし母が数年前に死去していたことを知り、急遽職場を退職し実家に帰る途中男に襲われ、首を絞められているところをリュウに助けられる。

 リュウがマリエに初めての恋をし、ずっと一緒にいたいがためにジンマに無理を言って(実際に交渉させられたのはシュウ)マリエを雇わせ、虎拳の寮に住まわせている。その接客応対力や事務処理能力の高さはジンマも評価しており、ユージをはじめレスラーからも好意を寄せられているが、サナダだけは(あのにかかりゃ初心うぶな童貞男のリュウなんざイチコロだろ。まぁ、若いうちは女に溺れて痛い目見るのも芸の肥やしだ)とマリエに対して異なる印象を持っている。


 殺されかけたマリエを運び込んだ診療所の医師は「ちょっと気になることがあります」と言っており(シュウだけがその内容を聞いたが他言はしていない)、また髪の毛が乱雑に切られたような形跡があったことなどから、男に襲われるまでにも何らかの経緯があったとみられる。



ゲンサイ


 長谷川彦斎ハセガワゲンサイ。空手の全国大会で何度も優勝している強豪選手で、その蹴りの凄まじさから人斬ひとき彦斎ゲンサイと呼ばれている。

 道場を開いて後進の育成に励んでいたが、門下生の一人が暴力事件を起こしたことから「師の責任を取る」と、ケジメのため道場を閉めてしまった。

 ヒゴのプロレス団体「肥後もっこす」から所属レスラーとしての契約を求められたが【食客しょっかく】としてなら、と条件付きで了承し、ケガで欠場の高良こうら選手の代理として正月3日の試合でリュウと闘う予定。侍のような雰囲気で江戸時代のような話し方をする。蹴り技がすごく、特に下段蹴りローキックが得意である。無表情で言葉少なだが、笑うと八重歯が可愛い子供のような顔になる。





クレマツ


 セキュリティサービス会社・火の国スリーエスの社長、久連松。料亭肥後ほまれの贔屓客で、オーナー・コトカを通じてリュウに自社の宣伝キャラクターになってくれるよう要望し、契約が成立した。虎拳プロレスの道場及び寮のセキュリティシステムを無償で提供し、試合の勝利者賞として腕時計型ウェラブルデバイス「アルティメット」も贈呈する。さらにはリュウの頼みでマリエに護身用機能に特化した女性用「アルテミス」を一年間のモニター契約を条件にプレゼントするなど、非常に太っ腹なスポンサー。



【他団体のレスラー】


 ★肥後もっこす(ヒゴの団体)


 ミヤベ:サナダと同じ託麻大学の同期。

 テッペイ:(ハルカタと荒くれコンビを組んでいる)ヒゼンのバトルロイヤルで3位。リュウに小城羊羹をあげて代わりに賞金をもらう。

 ハルカタ(荒くれコンビの片割れ)

 イワオ:新人レスラー。リュウにスコーピオン・デスロックサソリ固め(8の字固め)をかけるが、即座に掟破りの逆サソリで逆襲されギブアップ。



 ★GABAいひゅうもん(ヒゼンの団体)


 ギユウ:ヒゼンのバトルロイヤルで2位。リュウに松露饅頭をあげて代わりに賞金をもらう。

 オギノハナ:前座レスラー

 ジュンザ:新人レスラー

 カイジロウ:新人レスラー。リュウにノーザンライト・スープレックスをかけるが、スリーパーホールドで瞬時に締め落とされる。



【ヒゴの山で出会った若い男たち】


 山の中で美女(実は弁護士のレン)を襲おうと4人がかりで追いかけていたが、リュウに阻止された。木の枝やナイフを持ってリュウに立ち向かうもあっという間にやっつけられ、シュウにも半ば脅されながらの説教を受け、改心した。以後は地元の老人たちと共に山の安全活動にいそしみ、それが縁で全員彼女が出来た。虎拳プロレスの試合のチケットやリュウのグッズも大量購入するなど、今ではいいお得意さんとなっている。



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