●前回のおさらい●
先行として演奏した山中君達(嶋田さん抜きで)
当然の様に、彼らのファンである観客達は盛り上がるのだが……それに反して倉津君はと言うと。
「「「「「うわあぁあぁ~~~~!!良いぞぉ!!ヤッパ、最高だよアンタ等!!」」」」」
「「「「「嶋田さん抜きでも十分にスゲェ~!!奈緒様、ギターうめぇ~~!!」」」」」
「「「「「眞子ちゃんも、素直ちゃんも完璧!!このバンド最強だぜぇ~~!!」」」」」
「「「「「先生も安定感抜群だったぜぇ~~!!アンタ無しじゃ語れねぇ~!!」」」」」
「「どうだぁ!!」」
うん、まぁその、なんだぁ。
そんなオィちゃんの評価は別としてだな。
此処に居る連中は、このバンドのファンなだけあって、今の演奏で満足気に一気に盛り上がってる様なんだが。
ヤッパリ、俺の見立てとしては『全然』としか言い様がない演奏だったな。
これじゃあ奈緒さんと山中のアホンダラァが同時に言った『どうだぁ!!』も、ヘッタクレも無い感じだな。
ハッキリ言えば……嶋田さん抜きじゃ、本当に話にも成らねぇ。
返答するのも、面倒なぐらいだ。
だから、此処で1つ演出おば……
「ハァ……ヒナよぉ。ステージに上がるのも面倒臭ぇな。もう此処で弾く感じで良いんじゃねぇか?」
「そうだね。確かにステージに上がるまでもないわね。宣言通り、ステージの上で、晒し者にした方が良さそうだしね」
「だな。ほんじゃまぁ、行ってみっか。……『Silence-time』」
「はいはい、お任せ」
-♪-♪--♪-♪--♪--♪♪♪-♪♪♪--♪--♪♪♪-♪♪♪--♪--♪♪♪-♪♪♪--♪--♪……
ライブハウス内は、奈緒さんと山中の言葉で大盛り上がりをしてる様なんだがな。
そんなものは、知ったこっちゃねぇ。
勿論、軽々しく奈緒さんを無視して良いものではないのは解ってはいるんだが。
此処は敢えて、そういう俺の個人的な感情は無視して、俺とヒナは曲を奏で始めた。
しかも、俺が選曲したのは『Silence-time』
崇秀が作った曲の中でも、一番静かな曲だ。
要は、相手が迫力系の音だからと言って。
なにも目に角を立てて、迫力のある音で対抗する必要性なんて、何所にも無いからな。
こう言うのはギャップが大切だ。
確か崇秀も、そう言ってたしな。
(↑結局、受け売りな俺)
故に俺は、それに倣って、静かな曲で反撃の狼煙を上げる事にした。
***
止めどなく流れる静かなメロディーライン。
静謐で荘厳な音は、瞬間的に、この場の穢れた空気を浄化し、大きく盛り上がりを見せた観客達の熱量を一気に奪い去る。
それに伴って、観客達は騒ぐのを辞め。
ただ……静かなイントロにだけ、耳を傾け始めていた。
そこには、無駄な雑音なんか、なに1つ無い……
「♪~~~~」
そうやって、静けさを取り戻したライブハウス内に。
曲のイントロ部分の終わりと共に、ヒナのゴスペル・ヴォイスが、ライブハウス全体を包み込む様に染み渡っていく。
観客は更に、ヒナの声に圧倒されたのか。
もぉ此処では、完全に誰1人として声を出す者すらいなくなっていた。
静まり返った空間に、ただ、ヒナの綺麗な声と、俺達の演奏だけが支配していく。
後は……なにも無い静かな世界へ。
***
……曲が終わったのは6分後。
静まり返った店内では、未だ観客は茫然としたまま、誰1人として声を出す者はいない。
だからもぉ、これ以上、曲を奏でる必要性なんてない。
観客の反応を見れば、勝敗は、目で見るより明らかだからだ。
「如何でしたか?……私達の曲は、お気に召して頂けましたか、皆さん?」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「ふふっ、この反応だったら。……どうやら、聞くまでもなかったみたいですね。それに勝負は喫したみたいですね」
「そんな……こんな事って……」
奈緒さん……可哀想だなぁ。
勝負とは言え、ちょっと、やり過ぎたかなぁ?
「なにを言われても、これが現実。真琴と、私は、最強のコンビ。そんな私達に喧嘩を売ろうなんて100年早いんですよ。前世から出直したら、どうですか?」
「うっ……」
いや……そこまで言わんでも。
ヒナも、崇秀同様。
相手が誰で在っても、敵対する者に対しては一切の容赦がねぇんだよな。
「ちょ……ちょ、待てや!!なに勝手に勝った気になってんねんな!!勝負は、まだ付いてへんで。大体にしてオマエ等、まだ一曲しか弾いてへんやんけな」
「ハァ……止めるんだ、山中君」
「そやかて嶋田さん、このままやったら……」
「これ以上は、恥の上塗りをするだけだよ。……彼女達の実力は本物だ。今の君達じゃ、なにをやっても対抗出来無いよ」
「クッ……」
山中は口惜しそうにしてるが、それに反して嶋田さんは冷静だな。
音楽の経験値が高いから、俺達の実力を、あの一曲で見破ってくれたらしい。
勿論、俺も、ヒナも、全力で演奏したからこそ、嶋田さんは、こう言う判断を下してくれたんだろうけどな。
でも、これで、余計な争いを避けれるから、実に有り難い判断だ。
「まぁまぁ、今回は、完全に我々の負けだよ。敗者は、潔く、此処の場所を明け渡すのが、筋ってもんなんじゃないかい」
「そうですな。ミットモナイ真似して、すんません。……敗者は去るべきですよね」
「そうだね。向井さんも、それで納得出来るかい?」
「あぁはい。……今回は、なにも反論出来無いぐらい惨敗です。でも次回は、なにがあっても、絶対に負けませんから。必ずリベンジします」
「うん、それで良いと思うよ。じゃあ今回の所は、これで、お暇させて貰おうか」
へっ?
いや、なにを勝手に復讐劇で盛り上がってるんッスか?
こんな程度の事で、リベンジの対象とかには絶対に成りたく無いんッスけど。
それに、なんで引き上げる必要が有るんッスか?
俺等、別に、そんな馬鹿な真似をして貰う為に、此処に来た訳じゃないんッスけど。
なんで、そんな話に成るんッスか?
そうじゃないッスよね?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
こうやって、順当な勝利を収めた倉津君達に対して、自分達の敗北を認めた嶋田さんが、山中君達を諫め。
倉津君達に、この場所を譲る事を提案してるみたいなのですが。
どうやら倉津君は、この嶋田さんの行動に対して『?』が飛んでるみたいですね(笑)
では、何故、彼がそう思うのか?
果たして倉津君は、一体、何を考えているのか?
次回は、その辺を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
あぁっと、これは余談なんですが。
序章の頃に倉津君が初めてライブをやった時、崇秀と対戦する事に成り。
静かな曲で見事なまでに粉砕され。
『ぎゃふん』っと言わされた経験を、此処では逆バージョンでやってみましたぁ。
なので、此処で既視感を感じて下さった方は、相当なマニアだと思いますです(笑)
勿論、もし、そうやって気付いてくれた方がおられましたら、これ以上に有り難い事なんてないんですけどね♪
(((o(*゚▽゚*)o)))
読み終わったら、ポイントを付けましょう!