●前回のおさらい●
家の契約も万事上手くいった。
その成約に伴って、倉津君には、なにか親父さんに頼みたい事がある様なのですが……
さて、こうして、漸く家の契約は終わらせる事が出来たんだがな。
この後、ちょっと親父さんには、今度立ち上げるウチの新サイトについての話を聞いて貰いたい事があるんだよな。
まぁ、今その話をすると。
少々恩着せがましい感じが残っちゃうんだけど、コレもまた良い機会だと言えそうだからな。
「あの、親父さん」
「あぁはい、なにか?」
「あの、序と言っては、なんなんですが。親父さんの腕を見込んで、折り入って、少し相談したい事があるんッスけど……良いッスかね?」
「私の腕ですか?腕と言う事は、楽器の件でですね」
「そうなんッスよ。是非とも協力をお願いしたい案件なんッスよ」
此処からは俺個人の話だから、勿論、無理強いはするつもりは微塵もないんだけどな。
この間のモジャとした話を、俺なりに噛み砕いた話だけでも少し説明させて欲しいんだよな。
なんせアイツの性格上。
アイツが立てた案のままじゃ、きっと強引過ぎる面がありそうだからな。
所謂、交渉前の保険じゃよ。
「結構ですよ。なんなりとお申し付け下さい」
「そうッスか。すんません」
「……っで、なんですか?」
ってな訳で、勝負!!
「いや、なんて事はない話なんッスけどね。親父さんの作った楽器の広告を、今度立ち上げるウチのサイトで掲載したいんッスけど、良いッスかね?勿論、掲載代とかは結構ですので」
「えっ?はぁ……そんな事ぐらいでしたら、別に構いませんが」
「マジっすか。良かったぁ。あぁっと、それでなんッスけどね。あの、それに付随してブランドの名前なんかも決めて頂きたいんッスけど、なんかないッスかね?」
「ブランド名ですか?」
「そうなんッスよ。流石に広告を載せるとなると【名無し】じゃマズイんで、なにかないかなぁって思いましてね?」
広告を載せるのにOKが出た以上。
次は、その広告に載せるブランド名を【無名】ってブランド名に持って行ける様に交渉を進めてみた。
こう言った交渉ってのは、何事であっても一歩一歩進めていくのが大事だしな。
此処が決まってない以上、モジャの言う専属契約なんて夢のまた夢。
現段階では、まだまだ、そこの話をする場面でもないしな。
なので、そこに関しては、キッチリとサイトが立ち上がった状態まで持って行った上で、親父さんの、今残ってる仕事がハケてからするべき話だと俺は思う。
この辺については、奈緒さん流に、急がば回れって感じだな。
「そうですか。ですが申し訳ありません。私自身が、そう言ったブランド名には拘りを持っておりませんので。コレと言ってはなにも思い付かないですね。面目ない」
「そうッスか。でも、それは困りましたね。……だったら、一層の事【親父さんの名前】をブランド名で使ってみますか?」
「いや、やめて下さいよ。私は一介の楽器職人です。ブランド名に自分の名前を入れるなんて、あまりにも烏滸がましくて」
「あぁ、そうッスか」
【龍二ブランド】ってのも、それはそれで、格好良いかも知れないけどな。
ハイブランドなんかでも、結構、創始者の名前をそのままブランド名にしてる企業なんかも多いし。
世界的に有名な所で言えば『シャネル(ココ・シャネル)』『プラダ(マリオ・プラダ/マルティーノ・プラダ)』とかとか。
日本で言えば『トヨタ(豊田喜一郎)』『ホンダ(本田宗一郎)』
ちょっと変わった所では『ブリジストン(石橋正次郎)』が石=ストーン・橋=ブリッジなんて感じで、自身の苗字なんかを捩った企業なんかもあるからなぁ。
けど、まぁ、それはそれとして……助かったなぁ。
コッチに思惑がある以上『それでOK』って言われたら、どうしようかと思ったよ。
なんて事を考えていたら……
「ねぇ、おにぃちゃん」
キタッ!!
俺の膝の上に載ってる沙那ちゃんが、こちらに振り返りながら声を掛けて来た。
これは、実にセコイ手ではあるんだがな。
沙那ちゃんなら、きっと【無名】を推してくれると思い。
誘い水のつもりで『親父さんの名前をブランド名にしてみませんか?』って言ってみたんだよな。
だから、上手くいってくれ!!
「うん?なんだ?」
「あのね。この間、言ってた【無名】じゃダメなの?」
ヤッタァ!!
予想通り、沙那ちゃんが【無名】を推してくれたぁ!!
子供は素直だから好きだ。
いや、沙那ちゃんは、そうじゃなくても好きだがな。
「いいや。楽器ブランドでの登録商標がない筈だから、特に問題は無いけど」
「登録商標って、なに?」
「あぁっとなぁ。この商品は、この店で作りましたよって証拠みたいなもんだな」
本当は違うんだけどな。
ややこしい事をゴチャゴチャ説明しても、沙那ちゃんが混乱するだけかも知れないからな。
思いっきり、簡潔にした説明をした訳だ。
「それって、使っても良いって事?」
「まぁな。多分、大丈夫だろ」
「そうなんだ。じゃあ、お父さん【無名】にしよ。今までの名無しと一緒だし」
「沙那は、それで良いのか?」
「うん。別に、なんでも良いけど」
お気楽だなぁ。
ブランド名って、実は結構、拘ったりするもんなんだけどなぁ。
この親子には、全くその様子がないな。
「じゃあ、それで登録しちゃって良いッスかね?」
「はぁ。構いませんが」
アッサリ決まったな。
俺が1人でゴチャゴチャ考えてても、決まる時は、そんなもんなんだな。
「そうッスか。あぁ、でも、そう言えば、あれッスね。コレで、バンドの方の【無名】が、ウチのサイトに移籍してくれたら、予告通りWネームに成りましたね」
「いやいやいやいや、そんな恐れ多い。ウチと、バンドの【無名】さんが肩を並べるなんて、厚かましくて……寧ろ、アチラさんにとっては、迷惑この上ない話だと思いますよ」
相変わらず、こう言う所では自信はないんッスね。
「そんな事あらへんで。そのブランド名、ウチとしても大歓迎やで」
「山中さん」
うん?山中?
突然現れやがって、オマエなにしに来たんだ?
つぅか、何処から湧いてきやがった?
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
流石に現段階では、専属契約の話まではいきませんでしたが。
広告掲載、及びブランド名に関しての詳細は、意外な程にアッサリ決まってしまいましたね。
まぁ、親父さんも沙那ちゃんも、その辺に対する拘りが薄いだけに、こういう結果に成ったんでしょうが。
この承認欲求の薄さこそが、案外、良い方向に向いていくかもしれませんよ(笑)
さてさて、そんな風に契約の事前説明が進んだ所で。
何故か突然、山中君が来訪して来たみたいなのですが……一体、何用で来たのでしょうか?
次回は、その辺の来訪理由を書いていきたいと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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