●前回のおさらい●
大盛況の中終わったライブ。
それに伴い、多くの観客がファンに成ってくれた上に、ライブハウスとの関係も良好になった。
だが流石に、ヒナちゃんの体でのライブに疲れ果ててしまったのか。
帰り支度をしてる倉津君を尻目に、自然と、待ってる車の中で眠りについてしまった崇秀……大丈夫か?
何事もなく車を走らせて、丁度30分程経過した頃。
スヤスヤと眠っていた崇秀が、屋根に当たらない程度に一回大きく伸びをしてから、目を覚ましてしまった。
起きない様に細心の注意を払って運転してたんだが、それでも運転が荒かったか?
「あぁ、なんだよ。もぉ起きちまったのか?」
「……悪ぃ。どうも、寝ちまってたらしいな」
言葉の使い方からして崇秀だな。
これには少し安心した。
「構わねぇよ。今日は疲れてるだろうから、もぉちょっと寝てても良いぞ」
「いや、心配は無用。もぉ大丈夫だ。体力なら回復したから、余計な心配はイラネェよ」
「あぁっそ、そりゃあスゲェな。……だとしてもだ。もぉちょっと寝とけ。慣れない体で、あんだけのライブをやったんだ。幾らオマエでも、まだシンドイだろ」
まぁ、崇秀にとっちゃあ、全力じゃあなかったのかもしれないがな。
「おぉ、おぉ、なんだよ、なんだよ?気持ち悪いぐらい、気を使ってくれるじゃねぇかよ」
「当然だろ。その体はヒナの物であって、オマエの物じゃないからな。好き勝手に使われて、体調でも壊されたら、俺の立つ瀬がねぇんだよ」
「なるほどな。そりゃあ理に適った話だ」
「だろ」
現実的な話で言えば。
こんな自分勝手な事に付き合って貰ってるのに、崇秀の馬鹿に体調でも崩されでもしたらグツが悪いからな。
実際は、ドッチもドッチなんだけどな。
「……っとは言っても。完全に眠気が覚めちまったんじゃ寝る気にもなれねぇ。暇潰しに、こちら側での今後の話でも軽くすっか?」
「今後の話なぁ。……まぁ、実際は、そんな話をしなくてもな。今日のオマエとのライブで、殆ど、それを感じ取らせて貰ったよ」
「ほぉ……して、それはなんぞや?」
いや『なんぞや?』も糞も。
あれだけ露骨に、なにをすべきかを教えといて、そりゃあねぇだろ。
俺も、そこまでお間抜けじゃねぇわ。
「なぁ~~にな。『今日のライブが、今の所、こちら側でのヒナと俺の目標に成った』ってだけの話だ」
「なるほどな。まずは、この子の自力を上げて、今日のライブ位の盛り上がりぐらいは最低限作ろうって腹か」
「そういうこった。イキナリ大きな目標を持っても、達成までに時間が掛かっちまうからな、気持ちが萎えちまう。だから最初は、地道にコツコツ行こうって腹だ」
「オーライ。それもまた賢明な判断だ。……じゃあ俺からは、なにも聞く事はねぇな」
いや……それがまた有ったりするんだよな。
大きな疑問がな。
「まぁなぁ。基本的には、なにもねぇんだがよ。1つだけ教えてくれねぇか?」
「んあ?なんだよ?」
「オマエさぁ。今日のライブ演出で、誰がどう見ても、完全に女の子だったんだけどよぉ。……なんで、あんな器用な真似が出来たんだ?」
コレだけは、どうしても不思議でしょうがなかった。
確かに俺も、眞子の疑似体験をした事が有るから、女子の行動と言うものを多少なりとも理解はしてるつもりではあるんだが。
今日の崇秀がやった演出は、1日や、そこいら、女の子を体験したからと言って、出来る様な安い演出じゃなかった。
ましてや崇秀は『他人に成りたい』なんて馬鹿な願望もなければ『女の子に成りたい』なんて冒涜的な願望が有る訳でもない。
だから尚更、謎で仕方がなかったんだよな。
「あぁ、あれなぁ。あれ自体は、そんなに小難しい話じゃないぞ」
「そっ、そうなんか?」
「あぁ、全然、大した話じゃねぇな」
「じゃ、じゃあ、どういう原理なんだよ?」
あれが、大した事ないって……どう言う事だよ?
「なぁ~にな。さっきのライブ中、この子と、俺とで、体の分担作業してただけの話だぞ」
はい?
オイオイオイオイ。
またイキナリ、なにを訳の解らん事を言ってんだ、この子は?
「うぅ~~~んとな。また奇妙奇天烈な事を言い出したやがったな。オマエ、頭大丈夫か?」
「バカタレ。大丈夫だから、さっきのあれが出来てるんだよ、このボケナス」
「えぇ~~~っ!!けど。いや、あの、それ、ホント、どういう原理なんだよ?」
「いやな。単純な話で分類するならな。まずは演奏・歌唱・及び女性を演技する事が実務に成ってて。それに+α、この子に、それらを教え込むのが、俺の担当な訳なんだが。……此処まで理解出来るか?」
「おっ、おぉ」
既に無茶苦茶だな。
分担出来る事が前提に成ってるし。
「でだな。それらの実務をこなしながら。ライブ中、彼女には『女の子の演出の仕方』を、常時、指示して貰ってた訳だな。それこそが、さっき女の子らしく見えた種明かしだ」
「ちょ!!ちょっと待てよ!!マジでそんな事が可能なのか?」
「いや、可能だからやってるんだけど」
言うと思ったよ。
まぁ本人が出来るって言うんだから、此処は、深く追求するのは、ヤ~~メよ。
但し、もう1個追加質問だ。
「だとしてもよぉ。ヒナ役割って、たったそれだけなのか?」
「いや、寧ろ、それ以外に、この子になにをしろって言うんだ?大体にして、彼女は意識を共有するだけしか出来無い様な状態なんだぞ。なら、それ以外なにが出来るって言うんだよ?」
あぁ、そうか。
そこをスッカリ忘れてたな。
ヒナの意識は残してても。
体の自由は、一切合切、崇秀に主導権が有って、思い通りには動けないんだったな。
そりゃあ失礼。
「あぁ、そうかぁ。動けないんじゃ、どうにもなんねぇわな」
「そうだな。けどな、彼女の的確な指示を出ていたからこそ、あの演出が出来たんだから、演出家としての彼女の功績は大きいぞ」
「なるほどなぁ。確かに、そう言われればそうだな。でもよぉ……」
「でも?でも、なんだよ?まだなんかあんのか?」
「いや、特に、これと言ってはねぇけどよぉ。余りにもオマエが、完璧な女の子を演じてたもんだからよぉ。一瞬、身も心も女に成っちまったのかと思っちまったんだぞ」
「あぁっそ。そんなに成り切ってたか?」
「いや、ホントにな。吃驚する位のシンクロ率だったからよぉ。魂がどうにか成っちまったのかとも思ったよ」
コレは、マジでビビッてたからな。
もし魂が同化しちまったら、責任なんて取り様がねぇもんな。
それ以前に、住んでる世界が違うから。
魂が同化する事は、片一方を殺してしまった事にも成っちまうからな。
ホント……それだけは、なにがあっても嫌だしな。
最後までお付き合い下さり、誠にありがとうございますです♪<(_ _)>
車の中で眠っていたヒナちゃん(崇秀)
シュチュエーションとしては『また倉津君がフェロモンにやられて、ややこしい事をしてしまわないかなぁ?』っと、皆さんも懸念されたとは思うのですが……
意外と大丈夫でしたね(笑)
まぁ、フェミニストな倉津君が、眠っている女性に手を出すほど下種ではないので、此処は安心と言えば安心なんですけどね。
……っで、崇秀が起きた後も。
話に夢中に成っていたので、コチラでもおかしな事には成らなかった感じです。
要するに、何かに集中さえしていれば、ある程度あの凶悪なフェロモンにも抵抗出来るのかもしれませんね。
さてさて、そんな中、崇秀が完璧に女性を演じてた事についても。
無茶苦茶な理論とは言え、ある程度は倉津君も納得出来た様な雰囲気なのですが。
そうなると、魂の同化の方は、どうなんでしょうね?
次回のお話では、その辺を書いていこうと思いますので。
良かったら、また遊びに来て下さいねぇ~~~(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
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