ー スカイラーの屋敷 ー
スカイラーの家は大きな家で、母が元ビオラ奏者。
父はテレビプロデューサー。かなりお金も持っていてあの屋敷を建てた。母はビオラ奏者を引退したものの作曲家、編曲家としても今なお活躍している。世界的に有名な女性でドイツ人。父は某有名テレビをプロデュース。人気の日本人男性だ。
屋敷は西洋風の豪邸。執事やメイドさんも屋敷内にいる。
スカイラーに1人の執事が付いている。それが市場さんだ。
最近この屋敷では不穏な空気が流れていた。スカイラーと母のシドーニアが喧嘩した。
それはあの件の事。まだ文化祭準備期間が始まる前だった。
屋敷内、入ってすぐの右側には階段がある。スカイラーは学校が終わり帰った。
家に入ると、階段から丁度シドーニアが降りてくる。
〈シドーニア〉ゆきな、ちょっと来なさい。
シドーニアには倖奈と日本名で呼ばれることが多い。
〈スカイラー〉なによ?
と、ふたりは音を遮断する防音室に入った。ビオラやピアノなどの楽器が弾ける。
〈シドーニア〉ねえ、ビオラのほうはどうなの?
〈スカイラー〉どうって? 変わりないわよ
〈シドーニア〉最近、スクール行ってないそうね
〈スカイラー〉え? そりゃ勉強も部活もあるんだから行けない日もあるよ! ビオラは本気でやってる!
〈シドーニア〉あのね、それは本気とは言わない。本気なら部活も勉強も出来なくなるほど一所懸命になるの
〈スカイラー〉それは……
〈シドーニア〉あなたウィーンに飛びなさい
〈スカイラー〉え?
〈シドーニア〉丁度オーストリアで音楽院の募集が始まったわ。大学に入るまでは向こうでスクールに通って、大学からはウィーンの音楽院に留学しなさい
〈スカイラー〉え、どういうことなの? そんな急に言われても……
〈シドーニア〉あのね、これはあなたのために言ってるの。日本にいても音楽で活躍するのは困難なのはわかってるわよね? 本当にビオラ奏者になるなら向こうの音楽院で学び、本物のビオラ奏者になりなさい
〈スカイラー〉なんでよ! 私は高校卒業するまでは日本にいる!
〈シドーニア〉だめよ! 今まで自由にさせて来たんだから、母親の言うことききなさい!
〈スカイラー〉そんなこと、私が決めることでしょ?
〈シドーニア〉もしかして自信ないの?
〈スカイラー〉そんなことない! ただ勝手に決められて怒ってるの!
〈シドーニア〉あなたは才能がある。私に似てね。いま頑張らないとその才能も無くなっていくのよ
〈スカイラー〉ハア…… 私はあなたの機械じゃない
〈シドーニア〉そんなこと言ってないわよ。もう決めたから10月26日火曜日に行ってもらうから
〈スカイラー〉勝手に決めないでよ!
スカイラーは怒って防音室のからでると自分の部屋に上がり、扉をいつもより強く閉めた。
扉を背にずるっと徐々に座り込むスカイラー。
そして泣き始めた。そこに犬のオリビアが近寄ってくる。オリビアは涙を流すスカイラーの顔を舐めた。
スカイラーは、母に勝手に決められた留学、ビオラの事、学校のこと、部活のこと、全てが不安でどうしたらいいのかわからない。さらに「自信がない」と言われ、反撃も出来なかった自分にもイライラして泣いてしまった。
スカイラーはオリビアを抱きしめて、熱い涙で溢れていた。
ー 71日目 嫌な熱い涙 ー つづく。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!