次の日、声をかけられた。
掛けてきたのは渡部先生だ。地理学を教えている。クールな人だ。
〈渡部先生〉大戸先生
〈大戸先生〉渡辺先生、おはようございます
〈渡部先生〉おはよう。今日の夜いいか?
〈大戸先生〉え? あ、はい。なんか話ですか?
〈渡部先生〉じゃあ夜、いつもの焼き鳥屋で
〈大戸先生〉分かりました
最近、渡部先生と大戸先生は仲が良く、一緒に焼き鳥屋に行っている。
渡部先生は真剣な眼差しだ。いつも真面目な先生ではある。
その夜、2人で飲み屋に行くことに。
〈大戸先生〉なにかあったんですか?
渡部先生は一気にビールを飲み干し、ドンっと勢いよく置いた。
〈渡部先生〉酒田のやつ! あいつ、いつも変な小さいノートとか、変な文房具持ってきて俺を困らせるんだ
〈大戸先生〉また酒田くんですか? あの子きっと楽しんでますよ
〈渡部先生〉そんなことより! お前どうなってるんだ?
〈大戸先生〉え? なにが?
〈渡部先生〉なにがって、お前と千代先生だよ!
〈大戸先生〉え! き、気づい…… いやなんのこと?
大戸先生は嘘が苦手だ、そっぽを向く。
〈渡部先生〉お前ほんとに嘘下手だよね。この前、2人きりで教室で会っていただろ?
たまたま保健室にいてな、声がしたもので見ちゃった
〈大戸先生〉まじかよ! 他に知ってる人は?
〈渡部先生〉誰も知らないよ、俺以外
〈大戸先生〉秘密にしてくれ、あまり知られたくないんだ
〈渡部先生〉言うつもりはない。むしろいい雰囲気だったじゃないか。あれだろ? 同じ職場で、お互い教師で、千代先生に迷惑掛けたくない
〈大戸先生〉わかってるんだな
〈渡部先生〉おれにもそんな時期はある。うちの奥さん、颯希も教師だ。いや教師だった。気持ちはわかる
〈大戸先生〉そうだったんですね
〈渡部先生〉それで? どうするんだ? 君のことだから真剣に考えているんだろ?
〈大戸先生〉ええ、まあ。でもどうしたらいいのかわからなくて
〈渡部先生〉男らしくないな、君らしくやればいい。それでいい、サプライズとかも
〈大戸先生〉サプライズ! それいいね。なんかありがとうございます。気持ちが晴れましたよ
〈渡部先生〉いい報告まってるよ
この日はここで話を終え、家に帰る。
渡部先生はどうやら大戸先生の救世主のようだ。
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