1日で催眠術師になったのですが ヤラセじゃないかまだ疑っています

催眠術なんてあるわけない!のに、なんでみんなかかってるんだよ…(困惑)
アサミカナエ
アサミカナエ

18話・2

公開日時: 2021年5月19日(水) 11:11
文字数:1,274

 順調だと思っていたおれたちの活動が「おかしい」と気づいたのはそれから2週間後のことだった。

 大雨が降っていたのをよく覚えている。

 秋に変わるにはまだ早い肌寒さに、終わる様子を見せない雨。

 雨は嫌いではないけど、この日は湿度が高くて不快感しかなくて。

 恨めしく部室の窓から空を見上げていたときだった。



「あっれぇ……また減ったな」



 デスクでキョージンの独り言が聞こえた。

 PC画面を覗き見ると、右肩下がりの折れ線グラフが出ている。



「登録者数の推移? 最近不安定よね」



 廊下側のソファ席で本を読んでいた拝慈が顔を上げた。



「それに最近、またアンチがわいてるわ」


「僕じゃないからね!?」



 拝慈の向いに座っていた佐々崎が慌てて、おれとキョージンへと振り返る。

 そうだな。もしおまえがアンチやってたら次こそは血祭りだもんな。



「それ、なにか影響あるのか?」



 キョージンに尋ねると、わざわざ振り返って睨んできた。



「むっちゃあるわ! ようやく登録者数が6000超えてたんだよ。この調子なら9月末までになんとかギリギリ1万いけると思ったのに……このままだと怪しいぞ」



 キョージンはイラつきながら、最新動画のコメントをチェックしている。



「やっぱおれのモーニングルーティーンのせいじゃん」


「……」


「いや、そこ黙るなよ。シンプルに傷つくんだけど」


「……」



 気の毒そうな目もやめろ。



「いをりくんが悪いわけじゃないと思うわ。だって、個人SNSの方はうまくいってるのよ。今朝はBBDのフォロワーも2724人だったし」



 数字の把握、細かいな……。

 拝慈が言うように、SNSの運営は調子がいいらしい。

 なぜならおれは関わっていないから。

 おれのSNSセンスがなさすぎたために営業妨害という意見が出て、催眠術師用の新アカウントを開設することになった。

 運営は明夢と拝慈が担当している。



「神のSNS、自撮りが下手でかわいいって、微妙にバズってるよぉ〜」


「は、自撮……り? え、一体なに載せてるの……」



 サラッと身に覚えのない怖いこと言われたんですが……?



「それよりおまえら、登録者を減らさないためになんかアイディアねーの?」



 キョージンがPCを見つめたまま声を荒げる。

 余裕のない声に、空気が一瞬でピリついた。



「ねえキョージンー、もしかして、あるとき一気に登録者数増えたりしたぁ?」



 ソファの肘掛けに悠々とあごを乗せながら、動画経験者の佐々崎が言った。

 キョージンは手を止め、背もたれに身を預け考える素振りを見せる。



「……そういえば、急にドカッと増えたんだよな。割と最近」


「んじゃ、もしかしたらそのときにどっかに晒されたのかもよ? ばんちゃんが数字見てるはずなのに、なにも連絡なかったの〜? 僕聞いてみよっか?」



 スマホを触り始めた佐々崎が、すぐに顔をしかめる。



「あれ。3日前にばんちゃんからURLだけのメッセ来てたの今気づいた。てへ」


「うおい! で、なんだって?」


「アイチューブだー。って、えぇ……」



 佐々崎が真剣な顔で、開いた動画のタイトルを大声で読み上げた。



「【淫猥いんわい】高校生占い師・夢斗の二番煎じチャンネルを神多剛鬼の息子が開設【エロモク確定】」

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