その闇が燻ぶり出したのは、もう何十年も前の事だ。
アルガス解放の少し前、外の世界に自由を求めた男が居た。
彼は自らの意思で檻を抜け銀環を外したが、理想とかけ離れた現実に苦悩し、一人の女を助けて死んでいった。
もう一人は、生きる理由を探していた。
彼は外の世界を彷徨い、唐突に彼と出会う。
そんな二人に関わった男は、正義を唱えて三人目のキーダーへ手を差し伸べた。
「ねぇ、俺と手を組まない? こんな不条理な世の中を変えられるのは、痛みを知った人間だけだろう?」
絶望の淵に居た少年は、男の暗い瞳から逃れることができなかった。むしろその言葉が唯一の救いに聞こえたのだ。
だから、迷わずに手を取った。
望まぬ未来を引き起こす歯車の一つになるとも知らずに──
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