俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士!?

~誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件~
白野 ケイ
白野 ケイ

心臓に刺さる剣

公開日時: 2022年3月2日(水) 20:26
文字数:1,553

倒す? ウーラを? 全員対1で?

 

実力を知らなければそんなまさかと思うが、明らかに先ほどの風魔法は下位魔法ではない。

でもさっきの赤髪の少年もいるし、いい勝負にはなるのではないか。

 

ともかく、俺にやらないという選択肢は残されていないのだ。

 

「怖え奴は帰っていいぞ~。10分休憩したらはじめっからな。」

 

ウーラはその場にドカッとあぐらをかいた。

見たところ、この場の人は誰も帰っていないようだ。

 

「よう、さっきは色々とありがとうな!俺はカイバ・ミゲルよろしくな。」

 

振り向くとさっきの盾男がこちらにニコニコと歩いてきていた。

 

「俺は秋宮魁斗。よろしくなミゲル。」

 

「へぇ、変わった名前だな。」

 

お互いに握手を交わした。

 

「魁斗って何系の魔法使えるの?俺は雷!」

 

まぶしい笑顔でそれを尋ねるのは勘弁してくれ~

 

「えっと、俺は魔法が使えないんだ。」

 

「そうなのか!珍しいことだらけだな~」

 

あまり深く聞かれないことがありがたかった。ミゲルなりの気の使い方なのだろう。

 

「あ、そういえばさっきの白髪の子の名前も聞こう!」

 

思いついたような顔をするとミゲルは走り出し、すぐに白ショートの子をこちらに連れてきた。

いかにもびっくりという顔で連れられている。

 

「えと、私はセトラ・アリサ。氷魔法が使えるわ。よろしくね。」

 

はっきりした口調で答えた。

 

「よーし、そろそろ始めんぞ!」

 

俺らの自己紹介がひとしきり終わったころ、ウーラが叫んだ。

 

一気に空気が張り詰める。

 

「制限時間30分。どっからでもいいぞ。」

 

ニヤリとウーラが笑う。瞬間、全員がうあああと雄たけびをあげ、襲い掛かった。

 

 

「中位魔法:リストフロスト」

 

ウーラがつぶやくと、その場に立っているのはウーラだけになっていた。

全員が巨大な風に吹き飛ばされ、散り散りになっている。

 

「いてえ..」

 

俺の右腕と額からも血が出ていた。何が起きたのか。

 

「おいおい、軽く魔法使っただけだぞ?楽しませてくれよ。」

 

ウーラは心底楽しそうだ。

いち早く立ち上がったのは赤髪の少年だった。ものすごい速さで接近し、1人でウーラに切りかかる。

 

「お前は結構やれるな。」

 

ウーラは15センチほどのナイフを逆手持ちで戦っている。

レベルの違う2人の戦いに思わず見とれてしまう。

 

「下位魔法:小氷」

 

ウーラの死角から氷をまとった矢が飛んでいった。アリサの攻撃だ。

その攻撃にハッとさせられ、再び全員がウーラに立ち向かう。

 

「下位魔法:小雷!負けてらんねぇな!」

 

ミゲルも元気を取り戻し、ウーラの下へ向かった。

 

「お~、あの白い子やるね。中位魔法:リストフロスト。」

 

またも、巨大な風に吹き飛ばされる。が、赤髪の少年だけは凌いでいた。

 

「へぇ、やっぱお前いいな。」

 

ウーラが認めた声を聞いたあと、ずっと無言だった赤髪の少年が口を開いた。

 

「中位魔法:炎閃暁《えんせんしょう》」

 

尋常じゃない量の炎が剣に宿る。やがて炎が大剣の形になった。

初めてウーラが真剣な顔になった。

 

振り下ろした炎の剣はウーラを飲み込み、その後ろ70メートルほどの地面も焼き尽くした。

 

や、やりすぎじゃないか..?ウーラ死んだんじゃ..

 

会場が静寂に包まれ、地面がパチパチと焼ける音だけが響いている。

 

「いや~炎閃暁か。なかなかやるな。」

 

炎の中から声がした。炎がぐるぐると竜巻を起こしながら一か所に集まり始めた。

その中からウーラが姿を現した。

 

「すでに中位魔法使えんのか。いや~有望有望。っともう時間だな。終了~」

 

あの威力を防いだってのか。ほんとにでたらめな力だ。

赤髪の少年は力を使い果たしたのか、膝を着き息があれている。

 

その瞬間だった。

 

 

ウーラの背後の空間から突然男が現れ、背中からウーラの心臓にレイピアを突き刺した。

 

「へへっ、これで軍隊入りだなぁ。」

 

「うぐぁっ」

 

ウーラが膝を着く。

 

よく見るとその男の胸には【428】と書かれていた。

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