俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士!?

~誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件~
白野 ケイ
白野 ケイ

俺、就職した

公開日時: 2022年2月14日(月) 20:00
文字数:1,494

「いってぇ..」

 

気付いたときには、床に突っ伏していた。どうなった?扉は開いたのか?

擦りむいたほっぺたをさすりながら、よろよろと立ち上がり周囲を見回した。

 

明らかにさっきいた場所とは違うと、すぐに察した。教室よりも一回りほど狭い密室に、1人きりになっている。さっきまで触れていた大きな扉も消えている。

 

「なんだこれ、どういうことだよ..」

 

不安になりボソッと呟く。すると、

 

「ようこそ、職を貰いに来たのか?」

 

突然、低いのに遠くまで届きそうな、透った声が後ろから聞こえた。

さっき見まわしたときは誰もいなかったはずだが..

慌てて振り返ると、そこには男が1人で立っていた。

 

「あ、えっとそう、です。」

 

とっさにそう答えたが、見れば見るほど不思議な人だ。

いかにも神官、という格好をしており全身黒の衣装に身を包んでいる。ただ、長い神官の帽子を目が隠れるほどに深くかぶっており、顔ははっきりとはわからない。

声はかなりの年配に聞こえたが、口元はかなり若く見えるため年齢がいまいちピンとこない。

 

「ステータスをみせたまえ。」

 

再び低い声でそう言った。

言われた通りにステータス画面を提示し差し出す。

 

 

それでは、とつぶやいた後、その男は俺のステータスに手をかざしなにやら詠唱を始めた。

徐々に黒い光が部屋を包み始める。ピリピリとした空気がさらに強まっていく。

やがて黒い光で周囲が全く見えなくなった頃、男は目を瞑りなさいと俺に話しかける。

言われた通り目を瞑り、しばらくすると、

 

「目を開けなさい」

 

と声が聞こえた。

 

ゆっくりと目を開けるとステータス画面は消えていた。

 

「職がでたよ。ケントウシだ。」

男が伝える。俺が剣闘士?

再びステータスを確認する。職業の欄に、かすれた文字で【剣闘士】と刻まれていた。

 

「剣を握り、戦士として戦うがいい。それではな。」

 

男は口早にいうと、指をパチンと鳴らした。瞬間、今度は白い光が部屋を包み意識が薄れていった。

 

 

またまた、顔の前に床があることに気がついた。

 

「大丈夫!?」

 

ミーサが心配そうに顔を覗き込んでいる。あれ、なんかデジャヴだなこれ。

 

「いきなり出てきて倒れてるから心配したよ!こんなことないのになぁ。」

 

え、みんなこんな感じじゃないの。俺なんか嫌われることしましたかね。

悶々と心当たりを探すが、一向に見つからない。

 

「職業はもらえたの?」

 

ミーサの声にハッとする。そうだそうだ職だよ。確か、

 

「剣闘士って職をもらったよ。」

 

「えっ、剣闘士!?」

 

ミーサが驚いた声を出す。なにか特別なのか。

 

「職業にも分類があってね、農家とかの生産職やお店にいる販売職みたいに色々あるんだけど、なかでも剣闘士や魔法使いなどの戦闘職は貴重なのよ!」

 

ほうほう、レア職業なわけか。やはり俺は強かったわけだな。

 

「職に就いたときに職与者から武器貰わなかった?ステータスも上がってるはずよ!」

 

あれ、武器なんてもらったっけ?ステータスも上がってる気はしないが..

 

HP300 攻撃力75 防御力83 素早さ96 魔法力0

 

ミーサと顔を見合わせる。

えっと、ステータス.. うん、確かに上がってるな。攻撃力が3だけ。

またもやミーサが気まずそうに口元に手を置く。

 

「あ、えっとさ、戦闘職は王のもとに行って入隊の試験を合格しないと働けないの。ほら、軍隊の試験受けてみたら!魁斗がこの世界に来た理由がわかるかも。」

 

ミーサが作り笑顔で笑う。

多分、優しさで言ってるんだろうな。試験に受ければ立派な戦士だと。やってみなきゃわからんぞと。

 

でもさ、このステータスで戦闘の試験受けるって、ワニのいる川全裸でバタフライするくらい無謀じゃね?

 

「おっしゃぁ!やってみるわぁ!!」

 

俺は泣きながら答えた。

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