俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士!?

~誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件~
白野 ケイ
白野 ケイ

絶望

公開日時: 2022年4月24日(日) 20:22
文字数:996

「なんで太陽が2つも..」

 

片方が太陽ではないと気付いたのは、それから間もなくのことだった。

動いている。というより、どんどん近づいてきている?

 

「待って、あれってもしかして..」

 

突然ヘラが青ざめ、怯えた声を出した。

徐々に接近する太陽に翼のようなものが見える。冗談だろ。

 

ものすごい爆音が周囲に響き渡る。

太陽だと思っていたそれが、地上に着陸しこちらを睨んだ。

 

「なんなの..こいつ。」

 

全身が炎に包まれている翼を持ったドラゴン。体長は20メートルほどある。アレクが以前倒した奴ほどではないが、ものすごい大きさだ。おそらく..

 

「こいつ、上位魔獣、かな。魁斗。」

 

声が震えているのがすぐにわかった。青ざめた顔のままヘラは立ち尽くしている。

守りたい。ヘラを守ってあげたい。でもそんな力がないことは自分が一番わかっている。2軍の時点で勝負は決まっているのだ。

 

逃げよう。ヘラを連れて今すぐここから。走るくらいなら俺にもできる。

 

「へ、ネル!逃げよう!早く!」

 

そういった自分の足が全く動かない。ひたすらその場で震えるばかりだ。

くっそ!なんで足すら動かない!

 

「ビーテさん!ビーテさん!」

 

すがる思いでビーテを探す。3人で助からなければ意味がない。

 

「多分、逃げたよあいつ。」

 

「え?」

 

逃げた?俺らを置いて真っ先にか?なんて人だほんとに。

 

「ごめん魁斗。私ビビっちゃって足動かないや。先、逃げて。」

 

引きつった笑顔でヘラがこちらを見る。弱いからだ。俺が弱いからヘラが助けを求めることすらできない。

 

「うおらあぁぁ!」

 

太ももをバシバシと叩き、なんとか一歩踏み出す。なんとかヘラの下へ行くんだ。

 

「ネル!おぶされ!」

 

「え、でも。」

 

「いいから早く!」

 

ヘラを背負い、立ち上がる。一刻も早く立ち去るんだ!

幸いにもビーテはすでに逃げている。背負って逃げるだけだ!

 

不思議と炎のドラゴンはこちらを睨むだけで攻撃はしてこない。逃げられるんじゃないか?

 

ドラゴンに背を向け全力で走る。速く。遠くへ遠くへ。

 

もしかして敵意なんてなかったんじゃないか?たまたま通りかかっただけなんてこともあるよなきっと。

 

「魁斗..もう私たち、無理だよ。」

 

ヘラが泣いている。

 

「どうしたんだよネル!攻撃してこないし絶対逃げられるさ!」

 

「上..」

 

泣きながら空を指さすヘラ。

直後に響く爆音。まさか。

 

逃げる先に降りてきたのは、全身が凍った同じシルエットのドラゴン。

 

上位魔獣2体に囲まれたのか。

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