俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士!?

~誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件~
白野 ケイ
白野 ケイ

アレクVS上位魔獣

公開日時: 2022年3月15日(火) 20:23
文字数:1,109

初めて見る上位魔獣。

真っ先に感じたのは、恐怖だった。

 

怖い。戦えば完全に殺される。

みんな同じことを思ったのだろう。言われた通りに全力で走った。

 

魔獣は遠くから見れば、ただの茶色い土の山にしか見えない。

だがよく見れば、目だけ黄色く光り両手両足がある。うめき声も上げているようだ。

 

「やれやれ、上位魔獣と戦闘になるなんてな。1人でどこまでできるか。」

 

アレクの構えに隙がない。間違いなく本気だ。

タンッと魔獣の顔まで一足で飛び上がる。

 

「中位魔法:【炎閃暁】!」

 

魔獣の顔をものすごい炎が包む。呪文は同じだが、正直アルフレッドとは威力が桁違いだ。

使う人でここまで別物になるのか。

心なしか、アルフレッドは悔しそうな顔をしている。

 

上位魔獣は、無傷だった。

 

「この程度じゃ通用しないか..」

 

アレクが苦戦を強いられているのが伝わってくる。

あの威力で全くの無傷かよ。化け物め。

 

逃げることに必死だったが、気づけば逃げる先にもゴロゴロと下位魔獣が現れていた。

 

どうにか突破するしかない。

 

「下位魔法:【小雷】!やるしかねぇな!」

 

ミゲルも戦闘態勢に入っている。アリサもすでに弓を構えている。

このメンバーなら、中位魔獣くらいならば突破できるだろう。

 

「行くぞエヴァ!」

 

「はい、兄さま!」

 

アクオール兄妹の流れるような連携。2人にしかできない攻撃だろう。

速すぎて目が追い付かない。

あっという間に下位魔獣10体ほどは倒しただろうか。

 

逃げる先には下位魔獣しか現れていないため、アレクとはかなり距離が離れただろう。

このまま走り抜ければきっと助かるはずだ。

 

まぁ、俺とアイネはおろおろするばかりで何もできていないのだが。

クローカーも無言で走るだけで戦おうとはしていない。

 

10分ほど走っただろうか。もうかなり遠くに来た。おそらく助かるだろう。

 

ドカンと、真後ろに何かが落ちてくる音がした。

 

紛れもなく、それはアレクだった。

 

うそ、だろ?

アレクが負けたのか?

 

「も、もっと遠くにだ!はぁ、早くしろ!」

 

ボロボロになったアレクの姿が見えた。

 

やばいやばいやばい。

中位魔獣とはあまりにも格が違う。

 

走る速度を上げる。が、すでに上位魔獣に追いつかれていた。

魔獣のでかい手がこちらに襲い掛かってくる。

 

「あぁ!くぁあぁあ!」

 

アイネだ!逃げ遅れたアイネが魔獣の手につかまっている。

今にも握りつぶされそうになっている。

 

「中位魔法:【エンロード】」

 

「下位魔法:【小氷】」

 

アダンとアリサの攻撃は全く通用していないようだ。

アレクも立ち上がることが出来ない。

 

「うぁあっぁ!」

 

くそっなんで何もできない!

アイネが死ぬ。

 

ボトッと、地面に落ちた手。

 

「わりーな遅くなって。全員無事か?」

 

揺れる金髪。

立っていたのはウーラだった。

 

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