「そういえば名前聞いてなかったね!あたしはアオル・ミーサ。ミーサでいいよ。敬語も無しね!」
美人、いやミーサが楽しそうにこちらに笑顔を向ける。
女の子を呼び捨てなんて、聖羅くらいにしかしたことないが、照れて呼べないなんてカッコ悪いことはできねぇ。
「俺は秋宮魁斗。よろしくな、み、ミースぁ」
やべ、緊張でちょっと嚙んだか。気付いたからなのかわからないが、ミーサは俺の顔を見てうん、と微笑んだ。
「魁斗のこと、色々聞かせて。」
俺は歩きながら、住んでいた日本の事、高校の事、友達のことなどを話した。
ミーサ楽しそうに、それでいて真剣な眼差しでうん、うん、と相づちをうっていた。
異世界から来た、なんてぶっ飛んだ話なのにミーサは疑いもせず、それは大変だねと信じてくれた。相当性格のいい人だなこりゃ。
「まさか、こんなに信じてくれるとは思わなかったよ。」
「確かにびっくりはしたけど、一昔前に異世界から来た人が世界を救うっていう話が流行ったらしくてね。なんか親近感湧いちゃった。」
ミーサが舌を出しながら笑った。
俺らが宇宙人はいると言い聞かされ続けたら、実際に出会ったときに信じちゃうみたいなものなのかな。わからんけど。
「ほら、もう着くわ。ここがこの辺りでは1番大きい街、ルデビトよ。」
ミーサが正面を向いて指をさした。
話に夢中で気がつかなかったが、近くに来るとルデビトはかなりでかい街だった。
高い建物もあるが、見たところほとんど石材で出来ており西ヨーロッパを思わせる景観だった。
「フランスみたいだ。」
「フランス?」
「あ、日本以外にも国があって、そこに似てるなと思ってさ。」
「そうなのね!私もいつか魁斗の世界に行ってみたいわ。」
ふふふとミーサは冗談っぽく笑った。
「ここよ。ここがハウス。」
ひときわ大きな建物の前でミーサは立ち止まった。
教会のような佇まいをしたその建物は、まるで有名映画に出てくる魔法学園の城のようだった。白くて長いひげの校長先生とか出てきそうだ。
「これがハウス..」
「さぁ、早速職を貰いに行きましょう。」
ミーサと並んでハウスの扉を開け、中に入る。なるほど、中もかなり広くご飯屋らしきものや雑貨屋のようなエリアもある。古風のデパートみたいだな。
職与者と呼ばれる、職を言い渡してくれる人は地下にいるとのことで、入り口の正面奥にある階段を使い、地下へ降りていく。
途中、飲食店や武具店を見かけながら地下4階まで降りていく。
4階に下りた瞬間に、ガラッと雰囲気が変わったのを肌が感じていた。
そこには暗くて広い部屋に、大きな大きな魔界に続いているかのような5メートルほどの扉が1つあるだけだった。
「何だこりゃ..」
「ここが職与者の間よ。あの扉の向こうに職与者がいるわ。」
あんなでかい扉開けられるものなのか。それに..
「なんか、空気が重いですね..」
「職与者は職を言い与えるために、莫大な魔法力を使うからね。確かに雰囲気はピㇼッとするわ。でもそうね、なんだかいつもより空気が重く感じるわ。なんでかしらね。」
ミーサが不思議そうに顔を傾ける。
まさか、あまりにも弱い奴がきたから職与者がビビってんじゃあるまいな。
まぁしかし、ここまで来たからには行くしかないか。
大きな大きな扉の前に立つ。目の前に来るとやっぱりでかいな..
少しの緊張をぐっと押し殺し、扉に手を添える。
丁寧に取っ手なんかついてるわけないよなぁ。てかこれ押すの?引くの?様々な雑念が飛び交いながら、とりあえず全力で扉を押してみた。
「健闘を、祈っているわ。」
ギギギ、というきしむ音が聞こえたと思った瞬間には、扉の中から溢れだした光に飲み込まれていた。
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