俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士!?

~誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件~
白野 ケイ
白野 ケイ

異変

公開日時: 2022年4月22日(金) 20:00
文字数:1,279

「あの、よろしくお願いします。」

 

落ち込んでいるヘラに声をかける。俺も落ち込んでいるわけだが。

 

「え、あぁ。ヘラ・アークネルよ。同じ2軍のよしみでネルでいいわ。敬語もいらない。魁斗だっけ。」

 

「あ、はい。いや、そう、魁斗。改めてよろしく。」

 

いきなりため口にするというのは、なぜこんなにも難しいのか。

 

「あんたは1回戦突破してたのにね。残念。」

 

「そのアルフレッドが選ばれてるから、何とも言えないな。」

 

哀愁漂う2人。しばらく無言の空間が続いた。

 

「おい、行くぞ~」

 

遠くから声が聞こえた。

そこまで年上ではなさそうだが、ヒョロヒョロで頼りなさそうな男が鎧を着て現れた。

 

「俺ビーテ・ゲル。お前らの指導係なー。」

 

この人が指導?

少し不安だな。態度も高圧的に見える。

 

「秋宮魁斗です。」

 

「ヘラ・アークネル。」

 

ネルがすでにイラついているのがなんとなくわかった。

 

「ビーテさんって呼べな。じゃ、行くぞー。」

 

うーん、うまくやっていけるだろうか。

 

「どこに行くんです?」

 

「その辺の雑魚魔獣討伐だよ。2軍の仕事はそんなもんよ。」

 

いちいち言い方にとげがあるな。多分ヘラは今舌打ちした。

 

「まぁ成果上げれば1軍に上がれるって言ってたし、せいぜい頑張んなー。」

 

そうか、もう一生2軍の仕事しか任されないわけじゃないんだ。頑張ろう。

 

3人はルデビトを出て、魔獣の住むエリアへ歩き出した。

 

「ビーテさん、ワープする魔法使えないんっすかー?」

 

今日はなんだか熱い。汗だくのヘラが聞いた。

 

「ばっかお前、あんな貴重な呪文2軍が使えるかよ。」

 

あんまり2軍2軍言わないでほしいんだが。

ヘラも同じ気持ちなのか、さらにイラついているように感じる。

 

どれくらい歩いただろうか。

なんだか空気が重たくなった気がした。見渡すとちらほら魔獣がいる。

 

「出てきたぞー。ほら、討伐してくれ。」

 

「え、ビーテさんは?」

 

「は?俺兵士じゃねぇから。ただの事務員。」

 

え!?じゃあこの人、ほんとただ俺たちを送り届けただけってこと?

事務員って。

 

戸惑いといら立ちを何とか隠しながら、下位魔獣の討伐を続けるヘラと俺。

ビーテ座っているだけなのが、さらに腹立ってくるな。

 

それにしても。

一体何体いるんだ?俺は1体倒すのがやっとだが、ヘラはものすごい速さで魔獣を倒している。トーナメントでは意地を張って負けたが、やはり実力は本物だ。それでも次から次に湧き出てくる。

 

「なかなか減らねーなー。」

 

このやろビーテ。手伝えってんだ。

気温はどんどん上がっていく。暑さもあり、さすがのヘラにも疲れが見え始めた。

 

「も~いつまでやるのよ!疲れた!」

 

おかしいな。ある程度倒せば弱い魔獣は退いていくって教わったんだけどな。

減らないどころか増えていく一方だ。

 

ヘラの魔法力が尽きれば、少々危険な状況になる。

 

「ビーテさん!これは1度引いたほうがいいんじゃ。」

 

「いやぁ、でもなぁ。負けるとは思えないし。」

 

くそっ、兵士じゃないビーテでは戦況がいまいち掴めないか。

ヘラの強さを見て安心しきっているのだろう。

 

「え!?」

 

異変に気が付いたのは、ヘラの叫び声を聞いた瞬間だった。

 

空を見上げるヘラ。

 

空には太陽が2つあった。

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