俺の職業、「剣」闘士じゃなくて「拳」闘士!?

~誤字ってて気付かなかったけど、剣で最弱だった俺が拳では最強だった件~
白野 ケイ
白野 ケイ

勝負の行方

公開日時: 2022年4月11日(月) 20:00
文字数:674

会場も動揺で静まり返っている。

 

アルフレッドの剣が、折れた。

棒立ちになる2人。

 

いかんいかん、剣がおれていてもアルフレッドはきっと強い。

急いで足元に転がっている自分の剣を拾った。

 

「..でいい。」

 

アルフレッドがボソッと何かをつぶやいた。

俺に言っているのか?

 

「な、なに?」

 

「俺の、負けでいい。」

 

「え?」

 

えっと、どういうことだ?棄権ってこと?

 

少し悲しそうな顔をしたアルフレッドが、そのままリングを降りていった。

 

「え、えっと、勝者、秋宮魁斗!」

 

全然状況が飲み込めない。勝ちでいいのか?

 

トボトボ歩いているアルフレッドに、アレクが声をかけた。

 

「大事な剣だったんだろう。あれ、誰にもらったんだ?」

 

「師匠に。」

 

アルフレッドが小さい声で答えた。

 

「アルフレッド・ボルカ、かな?」

 

「なんで師匠の名前を?知ってるのか?」

 

バっと顔を上げたアルフレッドが、大きな声で聞いた。

 

「やはりボルカ師匠に教わっていたのか。アルフレッドと聞いてそんな気がしたよ。なんたって俺もボルカ師匠に剣を習ったからね。」

 

アルフレッドとアレクの師匠が同じ?まさか、そんなとんでもないことがあるとは。

 

「苗字が同じってことは、孫なのか?」

 

「いや、俺は生まれてすぐ親に捨てられて師匠が育ててくれたんだ。名前を付けてくれたのも師匠だ。」

 

「そうか。どおりでいい名前だと思った。本当に、負けでいいのかい?」

 

「剣が折られたのは、俺の力不足だ。」

 

くるっと振り向いたアルフレッドがこちらを見つめる。

 

「次は、勝つからな。」

 

待って、ほんとに俺の力で剣を折ったかもわからないのに。

 

こうして、俺は訳も分からぬまま主席に勝利を収めた。

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