会場も動揺で静まり返っている。
アルフレッドの剣が、折れた。
棒立ちになる2人。
いかんいかん、剣がおれていてもアルフレッドはきっと強い。
急いで足元に転がっている自分の剣を拾った。
「..でいい。」
アルフレッドがボソッと何かをつぶやいた。
俺に言っているのか?
「な、なに?」
「俺の、負けでいい。」
「え?」
えっと、どういうことだ?棄権ってこと?
少し悲しそうな顔をしたアルフレッドが、そのままリングを降りていった。
「え、えっと、勝者、秋宮魁斗!」
全然状況が飲み込めない。勝ちでいいのか?
トボトボ歩いているアルフレッドに、アレクが声をかけた。
「大事な剣だったんだろう。あれ、誰にもらったんだ?」
「師匠に。」
アルフレッドが小さい声で答えた。
「アルフレッド・ボルカ、かな?」
「なんで師匠の名前を?知ってるのか?」
バっと顔を上げたアルフレッドが、大きな声で聞いた。
「やはりボルカ師匠に教わっていたのか。アルフレッドと聞いてそんな気がしたよ。なんたって俺もボルカ師匠に剣を習ったからね。」
アルフレッドとアレクの師匠が同じ?まさか、そんなとんでもないことがあるとは。
「苗字が同じってことは、孫なのか?」
「いや、俺は生まれてすぐ親に捨てられて師匠が育ててくれたんだ。名前を付けてくれたのも師匠だ。」
「そうか。どおりでいい名前だと思った。本当に、負けでいいのかい?」
「剣が折られたのは、俺の力不足だ。」
くるっと振り向いたアルフレッドがこちらを見つめる。
「次は、勝つからな。」
待って、ほんとに俺の力で剣を折ったかもわからないのに。
こうして、俺は訳も分からぬまま主席に勝利を収めた。
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