「さと、は?どういう、どういうことだ?」
偽物か、走馬灯か?
剣を片手にヘラを抱えている男。どう見ても幼馴染の中野悟だ。
「なんて顔してんだよ魁斗。まさか俺の顔、忘れちまったのか?」
「忘れるわけないだろ!でも、なんで。」
動揺が隠し切れない。この世界に来たのは俺だけじゃなかったのか。
ちらりと落ちてきた黒い物体に目をやると、氷のドラゴンの腕だった。
「詳しい話は後だな。あれ、悪い奴だろ。倒しちまおうぜ。」
そう言うと悟は剣に炎を宿らせ飛び上がった。
剣を一振りするとドラゴンの顔は燃え、やがて消滅した。
「嘘、でしょ。上位魔獣をあっさりと。」
ヘラが目を丸くした。俺も全く信じられない。
「悟、その力..」
恐ろしく強い。多分、アレクより。
「なんか部活向かってたら地面真っ暗になってさ。気がついたらレプラスフォートって街にいたんだよ。」
俺と同じだ。地面に違和感を感じて気がついたらこの世界に。
しまった!悟の登場で炎のドラゴンを忘れていた!
「悟!後ろにもう一体上位魔獣が!」
「あぁ、燃えてるやつだろ?きっともう終わってるさ。」
終わってる?どういう..
「悟〜。とりあえず消しといたわ。」
さすがにもう声は出なかった。
聖羅だ。真白聖羅。聖羅までこの世界に来ている。
「聖羅まで、なんで。」
「あ、やっぱり魁斗だったのね!悟の言った通りだったわ。」
なんでそんなに平然としていられるんだ。こっちはもはや、夢か現実かもわからないのに。
というか、聖羅も上位魔獣を倒したっていうのか?
「ど、どういうことだよ2人とも!説明してくれ!」
思いがけず、大きな声が出てしまった。
それほど動揺しているってことか。
「その前に魁斗。大事な話があるんだ。」
突然真剣になる悟の顔。
「腹が減って、死にそうなんだ。」
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