「うおお!」
「え!うそ!」
ミゲルとアリサが同時に声をあげた。
紙にはミゲルの【506】、アリサの【23】がしっかりと刻まれていた。
「あ、いや、ごめんなさい。」
俺の番号がないことに気がついたのだろう。アリサがこちらを見て、はしゃいだことを謝った。
その優しさが辛かった。
ミゲルも一瞬喜んだあとは、悔しそうに拳を握りうつむいている。
「いや、すごいな2人とも!おめでとう。これから頑張ってな!」
応援の言葉を吐き出すのが精一杯だった。涙なんか流したら余計に気を使わせる。絶対に泣くな。
「俺はさ、大丈夫だからさ。また試験受けて、いつか2人に追いつくからさ。」
そうさ、すぐに追いついてやる。諦めたわけじゃない。
2人はまだ黙っている。
間違いであってほしいと、何度も紙に目を配る。当然、番号が変わっているなんてことはない。
【428】と刻まれていることに気付いた。あいつは受かってるのか。
そして印象的な【1】の番号。これは印象強くて覚えている。赤髪の少年だ。
あれだけの強さなら、受かって当然か。
深く深く、深呼吸をした。
やっぱり悔しいな。2人と成長していきたかった。
ガッシャン!
突然目の前の大きな扉が、風で吹き飛ばされ粉々になった。
会場がざわつく。
中からウーラが出てきた。が、ひどく怒っているようだ。
「ガタガタうるせぇな!いくら王でも、俺の決定に指図をするなよ!」
どうやら、ウーラが魔法で扉を壊したようだ。
何を怒っているのか。
後ろから、王の取り巻きだろうか、7,8人が慌ててウーラをなだめようとしている。
だが、ウーラは構わずに紙の方へ、づかづかと歩いていく。
紙の目の前まで来ると立ち止まり、どこからか黒いペンを取り出した。
「あの、あまり勝手なことは..」
「なんか文句あるのか?」
「い、いや..」
取り巻きは完全に怯えてしまっている。
何が始まるんだ?その場の人間は、一点にウーラを見つめていた。
ウーラはゆっくり丁寧に、それでいて大きく太く、ペンで紙に【449】と書き込んだ。
「えーっと、どこだ?お、いたいた。」
ウーラが俺に気付き、こちらに歩いてくる。
「よぉ、悪いな無能な王でよ。ま、これから頑張ろうな。」
ウーラがニコッと笑う。
頭がボーっとして返答が出来ない。
「おい、聞いてるのか?無視するとはふてぇ野郎だな。」
「あいや、びっくりしてその、大丈夫なんですか?」
どういう状況なのかいまいち読めない。俺は結局どうなったんだ?
「俺は認めてんのに、上が頑なに不合格だって言ってきてな。ま、お前はもう合格だから安心しな。」
「でも俺、こんなに弱いのに。」
「強くてなんぼと言ったが、なにも強くなきゃ絶対受からないってわけじゃない。まぁお前は弱いしすぐビビるし、頭も真っ白になりやすいけどな。」
「それ、俺いいとこなしじゃ..」
「でも、誰よりも強くなるだろ?」
なぜ、こんなに期待してくれているのだろうか。
ウーラが真剣な目でこちらを見ている。応えよう。この人の期待に全力で。
「はい!誰よりも、ウーラさんよりも強くなります!」
もう、やるしかないな。
背中に強い痛みを感じた。
「おい!おいやったな魁斗!なぁ!」
「おめでとう魁斗!これからがんばろうね!」
ミゲルが背中を叩いていた。
せき止めていたはずの涙が溢れた。
頑張ろう。これから頑張ろう。
こうして俺は、王に仕える戦士の道を歩みだした。
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