クズ度の高い少年が モンスターと戦って倒すと、倒したモンスターが美少女になって、倒した相手に絶対服従してくれる世界に行ってみた。

くろねこ教授
くろねこ教授

第60話 亜人の村の夜その1

公開日時: 2021年9月29日(水) 17:30
文字数:4,201

コノハの家で休憩をする一行。

“暴れ猪”はもう全て倒した。


みみっくちゃん、ハチ子、ハチ美が追い付いてきてくれたのだ。

ショウマはコノハ、タマモ、ハチ子と行動。

タマモが臭いで“暴れ猪”を捜索、村に詳しいコノハが案内する。

“暴れ猪”を倒す攻撃力はショウマが居る。

ケロ子、ハチ美、みみっくちゃんチームはユキトと行動する。

ハチ美が超感覚で“暴れ猪”を捜索、村に関してはユキトがいる。

攻撃担当はケロ子、支援のハチ美も居る。

そんなチーム分けだ。



ハチ美が“暴れ猪”を見つけた。

こちらを見て猛っている。


「ブモッ ブモモモーッ!」



『ツタ縛り』



「みみっくちゃんの魔法ですよ。身動きが取れないですからケロ子お姉さまトドメお願いします」


“暴れ猪”の足元にロープのような物が絡まっている。

良く見ると草だ。

植物が“暴れ猪”の足を縛り付けているのだ。


「はいっ」


ケロ子が“暴れ猪”の脳天に蹴りをかます。

高く跳んだ状態からのカカト落とし。

“暴れ猪”の脳天を足場に、再度跳んだケロ子。

空中回転してそのまま背中を踏みつける。

ケロ子の全体重を乗せた衝撃を受けた“暴れ猪”は身動き取れないまま消えていく。


辺りにいた村人が歓声を上げる。


「おおーっ、やるじゃないか」

「若いのに大したもんだ」


ユキトは見とれてる。

カ、カッコイイ。

華麗に宙返りしてイノシシを倒すケロ子。

ケロ子さん、キレイでさらにカッコイイ。

そして、助けられた時の身体に当たった感触。

温かくて柔らかかった。

ケロ子の方をぼーっと見つめるユキトだ。



そんなこんなで“暴れ猪”を倒すのは大した手間じゃなかった。

村を一周して、コノハさんの家で再集合。

多分、これで全部倒した。

ハチ子とハチ美はLVが上がっている。

ドロップ品『イノシシの肉』と『イノシシの牙』をショウマは大量に手に入れてる。

さらに『火鼠の革』。

そういやネズミも倒したね。


ドロップコインは何故か少ない。

銅貨が10数枚。

“火鼠”はともかく。

“暴れ猪”はそれなりの魔獣だった。

“大型蟻”が銀貨1枚だったハズ。

同じくらいの報酬はあっていいのに。


コノハさんの家は割と広い。

大きい部屋に通される。

棚はあるけどガラガラだ。


「すいません、殺風景で。

 薬草とか、薬の材料をしまっていた場所なんです。

 村を出る時に全て処分したから空いてるんです」


薬師の勉強をしてたんだっけ。

言われてみると薬のニオイがするかも。


コノハさんが毛皮を出してくれる。

動物の毛皮がたくさん。

『野獣の森』で手に入ったモノ?

適当に床に敷いて座る。


良く働いたし、休憩しよう。

そう思ったらなんだか表が騒がしい。

何故か人が集まってるみたい。


「コノハ姉、ホントに帰ってきてるの?」

「コノハちゃん。久しぶりだねぇ」


コノハさんが帰ってきたので村の人が訪ねて来たのか。

何故かコノハさんは回復薬を取り出してる。

見てると彼女は村の人に回復薬を使って回る。


「ありがとう。コノハちゃん」

「コノハ姉。戻ってきてくれたんだ」


口々に声を掛けられてるコノハさん。

村人たちは果物や野菜を差し出してる。

薬のお礼かな。


村にはケガ人が多い。

老人や子供がたくさんいた。

どうも若いのは戦士として、『野獣の森』に向かってしまったらしい。

『野獣の森』を探索して魔獣を倒さないと溢れて来る。

だから毎日昼間、戦士達が魔獣退治に行く。

そこを襲われたというコト?


今回の騒ぎに捲き込まれた人だけじゃない。

普段からこんな騒ぎは多いらしい。

そのたびに老人、子供まで魔獣に立ち向かっていくのだ。

そりゃケガもするよ。


「回復薬が足りないの。

 子供やお年寄りを優先してあげて」


コノハさんが言えば、老人たちも言う。


「ワシらはいい。

 子供を先にしとくれ」

「子供は痕が残ったら大変じゃ。

 ワシらはいまさらじゃよ」


フードを深くかぶるショウマ。


「みみっくちゃん。

 試してみてもいいよね」

「ご主人様、高ランクは止めてくださいですよ。ランク3以上使えるなんて言ったら騒ぎになるんです。それ以上はホントウに止めてください」


みみっくちゃんは肩をすくめてる。

止めてもムダでしょうねというポーズ。


「コノハさん。

 ちょっと試したいことが有るんだ

 上手くいけば回復薬を節約できる」


半信半疑のコノハさんに手伝ってもらってケガの多い老人、子供を集める。

白いローブでフードをかぶったショウマの周りにだ。


あれ。

良く考えたら、『癒す水』がランク1な事以外ランクが分かってないや。

うーん。

まぁでもこれがランク2だろう。

みみっくちゃんも正確なランク知らないし大丈夫。

ショウマは唱える。



『休息の泉』




「あれ?」

近くにいた子供が声を上げる。

ケガしてたハズなのに痛くない。


「おおっ」

老人が叫び声を出す。

さっきイノシシと戦った。

棒でイノシシを殴りつけた時指をくじいた。

小指くらいなんじゃ。

老人は指を抑えてガマンしてた。

それが何ともないのだ。


「これは、神聖魔法?

 ショウマさん。母なる海の女神教団の方だったんですか」


コノハは聞いた事がある。

治療院。

迷宮都市に有る。

母なる海の女神教団の神官が常にいる。

それなりの治療費を取られるが、傷を癒してくれる。

神官が神聖魔法で治療してくれるのだ。

ちょっとしたケガ位ならすぐ直るらしい。

状態異常、毒やマヒもだ。

でもマヒはだいたい時間が経てば治る。

毒は普通の冒険者は『毒消し』で治す。

動くだけでダメージが有るのだ。

治療院まで移動してる最中に死んでしまう。

石化や病気、重傷となるとそうもいかない。

高ランクの神官しか治せない。

そんな人は教団の本拠地、女神都市にしかいない。

報酬も普通の人が払える額では無いらしい。


コノハはまだ行った事が無いが、神官たちは白に青のラインが入った服装だと言う。

そういえばショウマさんはいま、白いローブを着ている。


「教団? 

 違うよ、違うよ。

 宗教関係者じゃないって。

 ナイショね、ナイショ」


ショウマさんは口に手を当てシーッというポーズ。

でも。


「すごい、すごい。

 兄ちゃんありがとー」

「おおっ。治った、治った。

 大したもんじゃな、お若いの」


すでに治療した村人たちは騒いでる。

その声を聴いた人たちが寄ってくる。


「なんだ、何かあったのか?」

「おう、お前こないだケガしとったろう。

 あの白い服を着た若いのに治してもらえ。

 まだ若いのに、大した術師だぞ」


「ええっ。神聖魔法かい。

 私は初めて見るよ」

「俺もだ。

 オフクロが骨を折って寝てるんだ。

 治せるのかな」


「頼んでみなよ。

 あのお兄ちゃん、スゴイよ」


どんどん人が集まって来る。

ショウマさんを見てみると、フードの下で顔が引きつってる。


「ごめんなさい、ショウマさん。

 今からでも村の人に帰ってもらいます」


良く分からないけど教団の神官は普通一人では行動しない。

多分何か事情が有るんだ。


もちろんショウマは知らない人に注目されてるのでビビってるだけだ。

でもそうも言ってられない。


「コノハさん。

 大丈夫、治療するから。

 でも村の人達に

 「治療のコト、僕のコトは絶対ナイショだよ」

 って言っておいて。

 治療費替わりだよ」


ショウマは『休息の泉』をさらに2回使った。

そこでおしまい。

コノハが気を利かせてくれたのだ。


「みなさん。

 今日はおしまいです。

 まだケガをしてる人もいるかもしれません。

 でもガマンしてください」


「神聖魔法は魔力を使います。

 この人はこれ以上魔力を使ったら倒れるところまで無理をしてくれてるんです」


そんな事は無い。

ショウマの感触では『休息の泉』だったらあと10回使っても平気だ。

でも実際ショウマは顔色が悪くなってる。

注目されてるのだ。

村人たちが集まってきてる。

知らない人の視線がショウマに集中してる。


「うわー 本当にケガが治った」

「あの兄ちゃんスゴイ!」


「神聖魔法か。聖女様のウワサは聞いた事があるけどホントウだったんだね」

「聖女様?」


「すごい神聖魔法の使い手だって、500年ぶりの奇跡のような人だって」

「ヘー、あの白い服の方もそれに劣らないんじゃないか」


「あの人が聖女様なんじゃないの?」

「イヤ、あの人は男だろう」


「じゃあ聖者様か」

「なんにしろ、ありがたい事だ」


言ってみれば、新入社員がいきなり壇上に上げられたようなものだ。

何の準備もしてないのに、一言どうぞとマイクを持たされた。

周り中、知らない人。

知らない人たちが自分に注目してる。

誰でも緊張する。

ましてショウマである。

すでにメンタルに深刻なダメージ受けてる。

このまま注目され続けたら吐くかも。


コノハが終わりにしてくれたので家の中に飛び込むショウマ。

コノハの家に飛び込んで壁にもたれかかって倒れる。

少し落ち着くと外の様子が気になってくる。


無料で回復してたのをいきなり中止したのだ。

暴動になってない?


日本だったら絶対騒ぎになる。

無料で商品を配ったりする。

キチンと列も作らず来たモノ勝ちで渡して、人が集まってきたらもう品物が無いのでお終い。

サイアクだ。

非難轟々だろう。

ショウマだったら絶対文句を言う。

なんなのコレ。

告知もせずルールも決めずにどうなってんの?

主催者ドコ?

責任者ダレ?

クレームの電話いれてやる。

SNSに晒してやる。

ちゃんと整理券くばれよ!

ってなモノだ。


なのに、

表からは怒りの声は聞こえてこない。


「痛くなくなったー。ありがとー」

「コノハちゃん。さっきの人にお礼を言っておいてくれ」


「ボウズ、治してもらったのか。良かったな」

「お爺ちゃん。ケガ治ったのね。良かったわ」


「白い服の人。ありがとう」

「コノハ。ありがとうって伝えてね。おかげで父さんが良くなったわ」


「お礼に持ってきた。ウチの果物だ。さっきの聖者サマに渡してくれ」

「そうか。オレも何かお礼持ってこよう」


ありがとう。

良かったね。

それしか聞こえてこないのだ。


鼻の奥がツンとする。

ショウマの鼻の中が熱くなってるのだ。

何これ、何これ。

花粉症?

森の近くだものね。

花粉も多いよね。

鼻から目にナニカ伝わってくる。

目が熱いのだ。

目がナニカでいっぱいになってる。

瞼から溢れそうだ。


ショウマは壁にくっついてる。

体育座り。

膝を抱え込んでいる。

しばらくは立ち上がれそうにない。



【次回予告】

ケロ子は夜寝る前にショウマさまの事を考える。どんな事を話したか、どんな顔をしてたか、誰とどうしてたか。ショウマさまで頭の中がいっぱいになる。多分そんなコトを言ってる。

「アクション映画の俳優みたい。それも悪役側?」

次回、ショウマは口に出してしまう。 

(ボイスイメージ:銀河万丈(神)でお読みください) 

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