河原が、ビキニなおっぱいでいっぱいだ!
「ぱらだ~いす!」
「目玉を抉り出すぞ、カタクチイワシ」
パレオに包まれた脚が伸びてきて俺の尻を蹴る。
振り返ればルシア。
黄色いワンピースの水着に、緑のパレオを撒いている。
なんだかパイナップルみたいな配色だ。
「ぽぃんとしていないパインアップルめ」
「よし、沈めてやろう。ギルベルタ、手伝うのだ!」
「今は難しい、私は。次が私の番、石積みゲームの」
ギルベルタはブラウンの落ち着いた色味のビキニを身に着けている。
子供っぽい背格好ながら、「よく出来ました」なおっぱいを持つギルベルタはビキニがよく似合った。
フリルが多めで可愛らしさも強調されている。
「あう……崩してしまった……私は」
高ぁ~く積まれてぐらぐら揺れていた石が崩れる。
河原の小石を積み上げて、崩した者が負けというルールらしい。
「はい、ギルベルタが罰ゲームね」
対戦相手のパウラとネフェリーに言われて、ギルベルタは「仕方ない思う、私は」と腹を決めた様子だ。
そして、デリアのもとへと走っていき、一言二言言葉を交わした後、デリアに川へと放り込まれていた。
……どんな罰ゲームだよ。
「なぁ? ギルベルタのヤツが放り込んでくれって言ってたんだけど、アレでよかったのか?」
「うんうん。デリアがハムっ子たちにやってるの見て、罰ゲームにピッタリって思ったの」
そんな危険なことしてんのか、デリア。
「生還した、私は。怖かった、ちょっとだけ、落ちる時に」
「大丈夫だよ。デリアはうまいから、ぶつからないところに放り投げてくれるし」
いらねぇなぁ、そんな信頼。
なら、そもそも危険なことすんなよって話だしな。
「よし、ならパウラとネフェリーも放り込んでやるよ!」
「えっ!?」
「いや、私たちは別に……ちょっと、デリア!? 待って待って! 待っ……!」
制止の声は届かず、パウラとネフェリーはゲームに負けていないのに罰ゲームを喰らっていた。
デリアにそういうことやらせるからだよ。
「ヤシロもやるか?」
「遠慮しとく」
「遠慮すんなって」
「遠慮しとく!」
そういうのは、無尽蔵なエネルギーを持っているガキどもにしてやれ。
「くわぁああ! 初めて泳ぎで負けたです!」
「うふふ~☆ でもロレッタちゃんも速かったよ~☆」
「もう一回お願いするです!」
野生のカッパこと、ロレッタが泳ぎで負けたらしい。
そりゃそうだ。相手は純正な海洋生物のマーシャだからな。
「ハンデでもなきゃ勝てないと思うぞ、ロレッタ」
「あ、お兄ちゃん」
「見てた? 私、勝ったよ~☆」
「淡水でも平気なんだな」
「ま~ね~☆」
どんな構造してんだろうな、こいつの体は。
肺呼吸もエラ呼吸もどっちでもいける感じか?
「どんなハンデをつければ勝てるですかね……そうです! ヒレを一枚取ってです!」
「痛い痛い~☆ ムリムリ☆」
「むむむ……」
「じゃあ、ブラを取ってもらうのはどうだ? 両手で隠さなきゃいけなくなって、両手使えなくなるぞ」
「それはいい案です! マーシャさん、是非!」
「ロレッタちゃ~ん、いいように操られちゃってるぞ~ぅ☆」
ロレッタのおねだりパワーでもダメだったか。くそぅ。
「ヤシロ君が私と競泳して、勝てたら今日一日手ブラで過ごしてあげてもい~よ~☆」
「で、俺が負けたら何をやらせるつもりなんだ?」
「海パン没収~☆」
「ちょっ、マーシャさん!? それはあたしたちの方が困るですよ!?」
「うふふ~☆ いつもの仕返しだよ~☆」
この後日暮れまで尻丸出しはムリだな。
「残念ながら辞退しよう」
「そっか~、ざ~んね~ん☆」
とか言って、今俺がここで海パンを脱いだらさっさと逃げるくせに。
……いや、脱がないぞ?
「相変わらず、賑やかさねぇ」
「ですわねぇ」
去年に引き続き、川辺のチェアベッドで寝そべるノーマとイメルダ。
とても色っぽくてよろしい。
「どうだ、二人とも。今年は泳ぎの練習してみるか?」
「「な、なぜ泳げないことを!?」」
いや、お前ら一切水に近寄らなかったし、泳げないんだろうな~って思ってたよ?
飯の後、ジネットと一緒にレッスンしてやるよ。
「店長さん、なんであの胸で泳げないんさね?」
「浮きそうですのにねぇ」
それはお前らもだろうが。
「ヤシロさん」
「てんとうむしさ~ん」
ベルティーナとミリィが仲良く歩いてくる。
今年もベルティーナはラッシュガードを羽織っているが……実は去年のものよりも裾が1センチほど短いのだ!
だから、去年よりもチラ見えラインが、攻めて……攻めているっ!
偉いぞウクリネス!
僕らのウクリネス!
「ジネットが呼んでいましたよ」
「あぁ、じゃあ手伝いに行くかな」
屋台の火が温まるまで、俺はちょこっとみんなに挨拶をして回っていたのだ。
陽だまり亭は午前中まで仕事をしていて、遅れてやって来たからな。
俺たちが来た時にはもうほとんどの者が揃っていた。
野郎も、呼んでないのにパーシーとモーマットが来ている。
ベッコも岩陰からノーマのおっぱいを盗み見しているし。
「あれ? ウーマロは?」
「うーまろさん、ぐーずーやさんが呼びに来て、一回仕事場に戻るって」
何かトラブルでもあったのか?
グーズーヤなら、一も二もなくデリアのビキニに食いつきそうなものなのに。
「デリア。グーズーヤと何か話したか?」
「ん? いいや。別に何も話してないぞ」
おかしい。
本当に緊急事態なのか?
……気になるな。
「何かあったのですか?」
俺の顔を覗き込んで、ベルティーナが不安そうに眉根を寄せる。
「あぁ、いや。何かあったのかなって」
「うふふ。ヤシロさんは、本当に過保護になられたのですね」
「どこ情報だよ、そんなデマカセ」
「街中で噂ですよ」
嘘が蔓延っているな、この街には。
そのうち、精霊神が「激おこぷんぷん丸だお!」とか言って殴り込んでこなきゃいいけどな。
「ヤシロさ~ん!」
屋台の向こうから、ジネットに呼ばれる。
そうだった。
今日はマーシャがウナギを持ってきてくれたから、蒲焼きにするんだった。
土用の丑ではないが、夏なのでウナギを食ってみようと思ってな。
「何か問題があったなら、エステラにでも相談するだろう。しばらくは様子見だな」
「うふふ」
ベルティーナが笑い、その隣でミリィも似たような顔で笑っている。
「ヤシロさん。『真っ先に相談してほしい』と、顔に書いてありますよ」
「え~マジか? 『ベルティーナの真っ白な太もも、わっほ~い』って書いてないか?」
「むきゅっ!? も、もう、そういう冗談はよくありませんよ」
頬を赤く染め、ぎゅっとももを締めて両手で隠すベルティーナ。
ふふふ、その恥じらいすらも最高の隠し味となるのだ。
「ミリィも、来年はモノキニ着ような」
「む、むりだよぅ……のーまさんみたいに、スタイルよくなぃ、もん……」
今年のノーマはビキニで、モノキニを着ているのはロレッタなのだが、そうか、やっぱりノーマのモノキニが鮮明に記憶されているのか。
マグダはタンキニ、ジネットは今年もホルターネックのビキニだ。
どちらもウクリネスの最新デザインでとても可愛らしい。
ジネットにいたっては非常にけしからん。
他の連中も、それぞれ新しい水着を身に着けている。
種類こそ増えてはいないが、それぞれの特性を生かしたデザインがされていて、俺が提供した初期のデザインよりも華やかになっている。
やっぱ、女性に任せる方が華やぐな、こういうデザインは。
「ぷはぁ!」
ザバッと、エステラが川から顔を出す。
「ヤシロ~! そろそろご飯?」
「今から作るところだ。あと十分くらい待ってろ」
海鮮たっぷりバーベキューなので、焼きながら食える。
ウナギは小一時間かかるから、大分あとになるけどな。
今年のエステラはシンプルな競泳水着のようなワンピースを着ている。
紺をベースに、脇腹が白、白と紺の間にビビッドな赤いラインが入っているデザインで、ウェストがきゅっと細く見える。
そして、結構なハイレグで脚が長く見える。
ハイレグ水着!
まさか異世界で再び出会えるとは!
流行れ、ハイレグとTバック! 日本のバブル期のように!
そして、エステラの隣を潜水で通り過ぎ、ナタリアがざばーっと川から上がってくる。両腕を振り上げながら。
「ダッダーン! ぼよよん、ぼよよん」
「どこで見た、それ!?」
「ノーマさんとの宅呑みで生み出したオリジナルギャグです」
お前、なんか前もそれで「だっちゅ~の」を生み出してたよな!?
センスが近いのかなぁ? あの頃の日本にさぁ!
「今年もエステラ様に圧勝しましたので、お食事のお手伝いをいたしましょう」
川から上がったナタリアは、エステラと似たデザインの競泳水着を着ていた。
デザインが似ているからこそ……
「格差が……っ!」
「勝手に泣かないでくれるかな、ヤシロ!?」
だって、こっちはむっちむっちのぱっつぱつなんだもん。
「あぁ、胸が苦しいですね……」
「じゃあ着替えれば!? ビキニも持ってきてるの知ってるからね!?」
そうか。
ナタリアはギリギリになって水着を替えたのか。
お前、命懸けてるなぁ……エステラをからかうことに。
手伝いを申し出てくれたナタリアを引き連れて、屋台へと戻る。
材料の下処理は済んでおり、あとは焼くだけになっていた。
ふと具材の隣を見ると、手巻き寿司セットが置かれていた。
……濡れた手で手巻き寿司って。
バーベキューと手巻き寿司って。
いや、いい海鮮が大量に入ったから、気持ちは分かるけどな。
「ウナギは、言われたとおりの処理をしておきました」
「お、悪いな。待たせたか?」
「いいえ。みなさん、ヤシロさんに水着を見せたかったのでしょうし」
え、そうなの?
じゃあ、ガン見してこようかな?
「ただし、紳士的ではない視線は遠慮してくださいね」
言いながら鼻を摘ままれた。
ほんのちょっと、ホルターネックで持ち上げられた胸元をガン見しただけなのに。
「んじゃあ、まぁ、ぼちぼち始めるか」
「はい」
「私は何をすればいいでしょうか?」
「じゃあ、その辺でセクシーなポーズしてて」
「それ、なんの役にも立たないですよ、お兄ちゃん!?」
「あはーん」
「役に立たないことを承知でやり始めたです!?」
「……その挑戦、受けて立つ」
「受けて立たないでです、マグダっちょ!? お昼の準備してです!」
賑やかに、飯の準備を進める。
川漁ギルドが河原で飯を食う際に使用している巨大で平らな岩、通称『テーブル』のそばへ屋台を移動させ、諸々の準備を進める。
わらわらと集まってくる面々に、ジネットが満面の笑顔で宣言する。
「では、みなさんでお昼ご飯をいただきましょう!」
一番元気に返事をしたのは、言わずと知れた、ベルティーナだった。
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