※追記 一部表記が足りない箇所があったため修正しました。(詳細は後書きにて)
今日の朝ごはんは仄かな香りがする木の実と薬草のサラダと、ジャムが塗られているパンだった。
薬師ということもあってか、ミラが作るご飯にはよく薬草が使われている。
無論、ただ入れているだけではない。他の食材の栄養配分を考えた上、それを補完する形で使われていることが多かった。
「このサラダ、おいしーい!」
「うふふ。好きなだけ食べていいからね、ゼッタ」
ミラはコロコロと笑いながら俺の頭を優しくなでた。
俺が美味しくご飯を食べる姿が余程好きなのだろうか、彼女は自分の持つスプーンやフォークを置いてまで俺の頭をなでてくれる。
もはや、俺としては一種のルーティンと化している。むしろ、なでてくれないと落ち着かないな。
「ねぇ、ママ。これってスピッドフォースだよね?」
口の中で広がるほんのり甘い香りにちょっとした酸味、そして少しだけ固く歯ごたえのある薬草、それだけの情報から俺はその薬草の種類を推測し、ミラに聞いた。
するとミラは目を丸くした後、とても嬉しそうに笑うと手を叩いてくれた。
「あら、よく分かったわね。大正解よ」
「やったぁ! 正解だぁ」
わざとらしく喜びながら、俺は記憶を巡らせて頭の中の薬草辞典のページを捲る。
確かこのハーブは匂いに若干の薬効があるという珍しいものだったはずだ。とはいっても、前世で言う脱法ハーブのようなドラッグではなく、人には無害で食べることのできるハーブだ。
それとポーションに加工した場合は……微量ながら体力回復速度と敏捷性の向上をもたらすポーションができたはずだ。
「へぇ、よく分かったな。凄いぞ、ゼッタ」
「ねっ? 言ったとおりだったでしょ? 本当に頭がいい子よねぇ」
「ああ。こりゃ、将来一流冒険者間違いなしだな!」
「あら? もしかしたら、私みたいに薬師になるかもしれないわよ?」
「しょっちゅう高いところから落ちて骨折したり、屋根の上で逆立ちして遊んでる子供が薬師になるんならそれはそれで面白いな。ハハハッ!」
……その節については本当に申し訳ありませんでした。
呵々大笑するクリフトに上品に口を抑えて苦笑するミラを姿を見て、俺は罪悪感ゆえに恥ずかしくなりその場でうつむいてしまった。
本当にいい人すぎるな俺の両親は、激しく怒鳴りつけることもなければ、俺を放置することもない。それに俺がどんなに2歳児らしからぬことをやってもそれを拒否するどころか、むしろ誇りに思ってくれている。
俺が書斎で技術書や歴史書を読み漁っているのも、入門書を片手に魔法の練習をしているのもすでに二人にはバレてしまった。
けれどそん普通じゃあり得ないな姿を見ても、ミラやクリフトは怖がるどころか、まるで自分のことのように称賛してくれたのだった。
ああ……どうして前世ではこんな家族に出会えなかったんだろう。
いや、実際は出会えていたかもしれない。でも俺の両親はすぐに他界してしまったんだ。
確か、俺の両親は爆発テロに巻き込まれて死んだんだっけ? まだ2歳の頃の出来事だから、よくは知らない。けれど……担架で運ばれているお母さんの姿は、今でも脳裏に焼き付いている。
「ねぇ、ママ、パパ。僕はずっと、ママやパパと一緒にいられるよね……?」
「……えぇ、もちろんよ。ママはゼッタを置いてどこかに行ったりしないわ」
「ハッハッハ! 変なことを言うやつだな。安心しろ、この優しくて強いパパがどんな時でもゼッタを守ってやるからな!」
「ふふっ、それ自分で言うかしら?」
「べ、別にいいだろ? 自分の息子の前くらいカッコつけさせてくれよぉ」
俺は幸せものだ。
転生させられた身とはいえ、こんな家族のもとで暮らせるなんてこの上ない幸せものだ。
いつか……親孝行ができるように、俺もがんばらないとな。
ミラに優しく抱きつかれていた俺は密かな決意を胸に、できるだけ子供らしく静かに笑ってみせたのだった。
ご飯を食べ終わった後、俺は家の隣にある小さな林へと来ていた。
本当であれば2歳の子供がこんなところに一人で来ては行けないのだが……こう見えて一応許可はとってある。話によるこの林には精霊が宿っているらしく、魔物は寄り付けないそうだ。
そんな場所だからこそ、ミラやクリフトは許可してくれたのだろう。
さて、そんな自然の遊び場所を与えられたわけだが、俺はとある目的でここまでやって来た。
木々を駆け抜ける風を身に受けながら、俺は手帳をめくってミッションを確認する。
・魂武器とはなにかを調べる。
・魂武器を扱えるようにする。
・ポーションの調合方法を学ぶ。
・成長速度を大きく回復させる食材を探す。
・なんの条件を満たせば経験値を貯められるか検証する。
・ダンジョンに関する情報を調べる。
今、俺が設定しているミッションはこんな感じだ。
特に1つ目と2つ目の課題は、ステータスを見られるようになった当初からずっと解決されていない項目だった。
しかし……今の俺なら、使いこなせるかもしれない。
俺は手帳をポケットにしまい、ゆっくりと深呼吸すると地面の上に置かれている銀色の拳銃を拾い上げた。
軽い……1歳の頃は持ち上げるだけであんなに苦労したというのに。
これならば、引き金を引いても衝撃を受け流せば脱臼せずに済みそうだ。
魔法について毎日何度も唱えていたからか、たった一年でかなり成長していた。
《通常スキル一覧》
【魔法発動】 10.85 《210%》
【罠解除】 1.00 《250%》
【射撃】 1.00 《250%》
【投擲】 7.15 《103%》
【※※※※※】 1.00
《魔法スキル一覧》
【魔弾生成】 11.02 《211%》
【魔弾発射】 1.00 《250%》
ステータスと比べたら成長は遅く感じかもしれないが、スキルの上昇はレベルが上がるごとに徐々に遅くなっていく仕様だ。致し方ないだろう。
どれくらい遅くなっているのか調べるために、一応次のレベルに上がるまでどれくらいの成長速度を消費するかを毎回メモしているが……経験値式はまだ導出できていない。
恐らく、今の情報でも求められるのだろうが、俺の想像力が足りていないのだろうな。
それと石を投げて器用を上げる訓練を始めて暫く経った頃から、【投擲】というスキルを習得した。恐らく物を投げる力を強化したりするスキルなのだろうが……訓練をするうえで勝手に鍛えられている、といったところだ。
「……今はそんなこと、どうでもいいか」
俺は興奮する気持ちを抑えつつ、固唾を飲み込むと、早速身体のマナを誘導し始める。
頭の中でFPSなどでよく見るマグナムの弾を強く思い浮かべると、それを手の上に生み出すよう、腕に力を入れて手を硬直させる。
すると眩い輝きとともに6つの弾丸が現れ、音を立てて掌の上に転がり落ちた。
「さて、早速装填してみようか」
恐る恐る俺は弾倉を開くと、そこに自分の手で作り上げた魔弾をこめ始めたのだった。
※追記 スキル一覧に【投擲】を追加し、それに関する説明を追加しました。急な設定修正申し訳ありません。
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