5times of Life

とある天才廃人ゲーマーの超鬼畜なライフ制異世界生活
井浦光斗
井浦光斗

第4話 筋トレ

公開日時: 2020年9月1日(火) 21:01
更新日時: 2020年9月27日(日) 15:16
文字数:3,441

 この世界に転生してから一年――俺はステータスの存在を把握した。

 赤ちゃんになってから毎日、本当に俺は転生してしまったのか、これは長い夢なのではないかとずっと考えてきたが……ようやく実感を持てた気がする。


 傍から見ればはただのゲーム、しかしこれは紛れもなくゼッタの人生そのもの。

 俺自身の選択や行動がこれからの生活に大きく影響するのは言うまでもない。

 さらに言えば、人生はゲームとは違ってやり直しがきかない。些細なミスすらも許されはしないのだ。


(……時間は有意義に使ったほうがよさそうだな)


 頭の中を整理した俺は書斎に潜り込み、幾つか並べられている新品の手帳とペンを一セットだけ借りる。

 そして、そこにつたない文字で俺が今やらなければならないことを書き出し始めた。


 ・ステータスの数値の意味を解明する。

 ・なんの条件を満たせば経験値を貯められるか、ステータスを上昇させられるか検証する。

 ・魂武器ソウルウェポンとはなにかを調べる。

 ・筋力と敏捷性の向上。


 もっとも優先すべき事項はおそらくこの辺りだろう。

 本当であれば現時点でどんなスキルが使えるか、スキルは新たに習得できるのかも検証したいところだが、手を出すのはステータスの仕組みをある程度理解してからの方がよいだろう。

 変に先走って取り返しのつかないことになるのはごめんだからな。


 ちなみになぜ筋力と敏捷性の向上を優先するかというと、あの銃を持てるようにするためと、移動時間を短縮するためだ。

 筋力と敏捷性の意味をはき違えていなければの話だけど。


 ひとまず、これらのやるべきことリストはミッションと名付けることにしよう。

 当面はこのミッションをなし遂げることを目的として動き、この世界での生き方を学んでいこうじゃないか。


(そうと決まればまずは、ステータスの数値の意味について考察するか)


 俺は手帳を持って書斎からでると、木製ベッドの中へと戻った。

 そして例のルービックキューブことステータスキューブを回し、目の前にステータスを表示させた。



【レベル】 1

【生命力】 5.00 (50.00)《100%》

【マ ナ】 3.00 (30.00)《100%》

【筋 力】 1.01 (10.05)《 99%》

【耐久力】 1.00 (10.02)《 99%》

【魔 力】 1.50 (15.00)《100%》

【知 識】 1.00 (10.03)《 99%》

【器 用】 1.50 (15.00)《100%》

【感 覚】 1.50 (15.00)《100%》

【敏捷性】 1.00 (10.00)《100%》

【幸 運】 0.50 ( 5.00)《100%》

【健 康】 普通

【経験値】    0/1000


 

 普通のRPGゲームと比べて明らかに項目の数が多いが、上昇の仕組みはどれも共通しているはずだ。

 だからどれかひとつでも変化する瞬間を観測できさえすれば、数値の意味を推測できるだろう。


 通常であればステータスが上昇するタイミングはレベルアップの瞬間のみ。

 しかし筋力と耐久力、知識に関してはすでにわずかながら変動が起きている。

 これから察するに――恐らくこの世界ではレベルアップ以外にもステータスが変動するトリガーが存在するということだ。


 それにしてもわざわざ小数点以下まで記述する必要性はあるのか?

 微細な変動すらもステータスとして表示したいという神の意向の表れなのか。

 それかステータスキューブ使用者に、ステータス変動を観測して欲しいからなのかもしれない。



(ちょっと待てよ……。よく考えたらすでにさっきと値が変わってないか?)



 俺の記憶だと筋力のカッコの中はたしか10.03だった、それに――知識の値もさっきまでは初期値だったはずだ。

 ほんの僅かではあるけど、キューブを初めて起動してから再度起動するまでの間に俺の中で何かしらの変化が起きたかもしれない。

 いや、間違いなく変化は起きているはずだ。


(振り返ろう、キューブを起動してからの俺の行動を)


 とはいっても本当に大したことはしていないはず。

 両親に魂武器ソウルウェポンの存在をバレないように床下に隠したあと、書斎に行って手帳にミッションを書き出したくらいだ。

 この行動のどこにステータスを変動させるトリガーが存在するのだろうか……?


(もしかして、筋力の数値が上がったのは重いものを持ったからか?)


 たしかに魂武器ソウルウェポンは持ち上げられないほどの重量があった。

 床下まで運ぶには引きずりながらでないと不可能なほど、俺にとっては重たかったのだ。


(筋肉に負荷をかける。それが筋力の数値を変動させるトリガーなのか?)


 ステータスについて考察をはじめてからわずか数分、俺は1つ目の仮説を立てた。

 あまりにも当たり前過ぎる考え方だが、こういうのは素直な発想をした方が正解にたどり着くことが多い。

 そうと決まればさっそく検証しよう。トライアンドエラーこそ成長の近道だ。


(さてと、さっそく来たるべき時が来ましたよっと)


 ついさっきお別れを告げたはずの魂武器ソウルウェポンを取り出そうと、俺はそれに両手を添える。

 そして今出せる限りの力を込め、床下から引っ張り上げたのだ。


「ふぬぬぬ……ッ!」


 某童話のごとく、かぶを引っ張り上げているような気分だ。

 そして腕がつりそうになりながら、なんとか部屋の中まで持ち上げることに成功したのだった。


(これ……もはや銃じゃなくてダンベルだろ)


 実際、俺はこれから本来の用途ではなく筋トレの道具としてこの銃を扱おうとしている。

 悪いな魂武器ソウルウェポンよ、まず筋力をつけないとお前を使うことすらままならないんでな。


(さすがに赤子が筋トレしている瞬間を見られたらマズいから、声はできるだけ出さないように意識しよう)


 覚悟を決めた俺は再び魂武器ソウルウェポンを手で持つと、全身全霊を尽くしてそれを持ち上げようとしてみる。

 しかし結果は想像していた通り、銀色の銃は立ち上がるだけで床からは一向に離れようとしない。


 そして銃持ち上げチャレンジを続けること約一時間――俺は両腕が痙攣するほど疲労していたのだった。


(ダメだ、1歳の俺には到底持ち上げられねぇ重さだ)


 赤ちゃんには自分の体重を支えられるほどの力があるって習ったんだが、あれは嘘だったのか?

 一年間ごろごろしていたせいで、筋力が低下しているだけかもしれないが……こんなにか弱い存在だとは思いもしなかった。


 さてと脱線はこれくらいにして本題に戻ろう。

 今回の主題は銃を持ち上げることではなく、筋力の数値はどのように変動するかの検証だからな。


 銃を床下に戻した俺はなんとか木製ベッドの中へと移動し、そこで再びステータスキューブを回す。



【レベル】 1

【生命力】 5.00 (50.00)《100%》

【マ ナ】 3.00 (30.00)《100%》

【筋 力】 1.05 (10.54)《 39%》

【耐久力】 1.03 (10.33)《 93%》

【魔 力】 1.50 (15.00)《100%》

【知 識】 1.01 (10.05)《 99%》

【器 用】 1.50 (15.00)《100%》

【感 覚】 1.50 (15.00)《100%》

【敏捷性】 1.00 (10.00)《100%》

【幸 運】 0.50 ( 5.00)《100%》

【健 康】 筋肉疲労[筋力 《-50%》]

【経験値】    0/1000



「……よし!」


 筋力のカッコ内の値はひと目見ただけでもわかるほどに上昇している。

 つまり、俺の仮説は間違っていなかったということだ。


 さらに言えば、副産物的に耐久力も上昇し、カッコのついていない値もわずかながら変動している。

 これを見る限りだとカッコの中は補正前の値と考えるのが自然かな。10分の1ってどんなデバフだよ。


 ……仮にステータスが10分の1になるデバフがかかっていたとして、なぜそんなものがかかっているんだ?


 ふと俺の頭にエクストリームの文字がよぎるが、静かに首を振った。

 あれはあくまでも成長速度を遅くするものであって、初期状態にデバフをかけるものではないはずだ。

 だとしたら、どの難易度を選んだとしてもこのデバフはかかっていたことになるな。


(考えられるのは……赤ちゃんだからとかかな?)


 生まれたばかりの赤子の力が強すぎたら色々と問題があるもんな。

 赤子だからステータスを10分の1にした、そう考えれば説明がつくだろう。

 けれどこれに関して検証するのは難しいな……ひとまずこの議題は保留しておくとしようか。


(ともかくこれで筋力と耐久力の上昇条件は判明した! 筋トレこそが今すべきことなんだ!)


 ひとつ事実が判明したことで興奮した俺はさっそく筋トレの続きをしようと考える。


 しかし“筋肉疲労”の文字を見た瞬間、我に返ると同時に察したのだった。

 これ以上筋トレしたら流石にマズいと……。

どうも、井浦光斗と申します。


この話まで読んで……ステータスについて察した方は察したと思います。元ネタは今、あなたが想像しているもので間違いはないでしょう。この小説を書くきっかけとして、あの世界観を小説に落とし込めたらいいなと思ったからが大きいと自分でも感じています。


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