「いつまで続ける気だ?」
俺が問うても、豪傑の眼には炎が燃えていた。
止まる気配など微塵もない。
「あなたが! 倒れるまでです!! 【ジャガー・メテオ】!!!」
鋭い咆哮。
空中に閃光が走る。
無数の石が、豪傑の手から絶え間なく放たれてくる。
その剛腕から繰り出される一投一投が、雷鳴のように大地を揺らした。
砲弾のように重く、鋭い。
石の出どころは、豪傑の懐か。
妖具が石を次々と供給しているらしい。
その底は見えず、無限にも思えた。
このまま相手の技を受け切るのも悪くない。
だが、俺にはあらかじめ提示した『10分』という制限がある。
その時が近づきつつある今、俺は腹を括った。
ここで、俺という存在の「格」の違いを、思い知らせるとしよう。
「石で攻撃するのはお前の専売特許ではないぞ? ――【石弾生成】」
その言葉とともに、俺の周囲の空間が震え、重力を無視したように石が出現する。
浮かぶ石たちは、まるで意思を持つように俺を中心に旋回し、構えを取る。
「くく……。お前の技とは、少し違うか?」
「なっ……」
「こっちの方が効率的だろう! 【石弾乱射】ぁ!!」
解き放たれたのは、まさに石の暴風だった。
空気が裂け、石弾が唸りを上げながら突き進む。
その数、勢い、精度――単なる模倣ではない。
完全な上位互換。
腕力や妖具で構成された技より、圧倒的な魔力から繰り出される魔法の方が強い。
それが道理だ。
俺を中心にした円陣から発射されるそれらは、機関銃の連射の如く、隙間を与えず豪傑に襲いかかった。
「おお……。兄貴、容赦ねぇな……!!」
耳に届いたのは、流華の声。
彼の声援が胸を打つ。
鼓舞される。
まるで彼の言葉が背中を押してくれるようだった。
「このまま押し切ってやる! ……む?」
石弾は確かに命中していた。
直撃しているはずだった。
だが、豪傑は止まらない。
ダメージを無視して前進してくる。
常識を超えた耐久。
筋肉や闘気がダメージを低減させているのか?
「まだまだ! 【ライノ・ホームラン】!!」
叫びと共に放たれたのは、明らかに規格外の一撃。
巨大なハンマーが、横一文字に振るわれる。
大地が風圧で裂け、砂塵が巻き上がった。
「そんな大振りの攻撃、この俺に当たるはずが――うおっ!?」
回避したつもりだった。
距離を取ったはずだった。
しかし――豪傑の動きは想定外だった。
一回転。
まるで曲芸のような体捌きで、続けざまにハンマーを投擲してきた。
……ん?
ホームラン?
豪傑の技名が引っかかった。
それは確か、地球の野球用語だ。
違和感がある。
ここはヤマト連邦だ。
なぜ、ホームランなどという言葉が豪傑の技名に含まれている?
俺には、『異世界言語』のチートスキルがある。
だから勝手に意訳された――だけ?
ヤマト連邦のどこかに、野球に似たスポーツが実は存在している?
本当に?
本当にそれだけか?
何か……何か、もっと重大な……俺は、何かを――
ズキッ!!
激痛が頭を貫いた。
思考が千切れる。
全身が痺れ、視界が揺れる。
「うっ……!!」
回避が遅れる。
妖術『散り桜』の制御も不安定になる。
投擲されたハンマーが俺の肩をかすめ、その衝撃でバランスを崩した。
地面に背を打ち、仰向けに倒れる。
「オ・オ・ザ・ル!! メリケン!!!」
掛け声とともに飛び乗ってくる豪傑。
マウントポジションから振り下ろされる拳は、まさに必殺。
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