【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1731話 死牙藩の白夜湖に到着

公開日時: 2025年4月28日(月) 12:10
文字数:1,213

「……っ! おい、その傷は何だ!? しっかりしろ、流華!!」


 死牙藩の白夜湖に到着した俺は、視界に飛び込んできた流華の姿に、思わず声を荒げていた。

 彼の太ももからは、血がダラダラと流れ出ている。

 周囲には彼の同行者――無月や幽蓮の姿もあるが、誰も彼もが何らかの傷を負っていた。


 聞いていた情報と違う……。

 報告書によると、もう少し軽傷だったはずだ。

 俺がここへ駆けつけるまでのわずかな時間で、激しい戦闘が発生したのか?


「あ、兄貴ぃ……。すまねぇ、しくじった……」


 しゃがれた声が耳に届く。

 倒れた流華が、地面に手をつきながら必死に顔を上げ、俺を見た。

 傷の痛みと脱力に抗いながらも、瞳だけは俺の姿を追っていた。


「無理して喋るな……。すぐに治療してやる! ――【エリアヒール】!!」


 俺は焦燥を押し殺し、詠唱の言葉を短く鋭く放つ。

 治癒の光が辺り一帯に広がり、流華をはじめ、無月や幽蓮の傷も癒やしていく。


 だが、魔法はあくまでも表面の修復に過ぎない。

 すでに流れ出た血や奪われた気力までは戻らない。

 彼ら彼女らの表情には、深い疲労の影が色濃く残ったままだ。

 特に、流華――。


「う……」


 微かな呻きが漏れる。

 俺はすぐに膝をつき、顔を覗き込んだ。


「流華! 大丈夫か?」


 彼は唇を引き結びながらも、どこか安堵の色を含んだ微笑みを浮かべた。


「だ、大丈夫だ。兄貴が来てくれたから、もう安心だ。手間をかけちまってすまねぇ」


「馬鹿野郎、俺の手間なんてどうでもいいんだ。お前たちが無事なら、それでいい」


 俺はその額に手を添える。

 ひどく熱い。

 熱があるのか、それとも戦場の興奮がまだ身体に残っているのか。

 何にせよ、この状態で謝らせるのは、酷というものだ。


「一体何があった? お前たちに深手を負わせるなんて、ただの敵じゃなかったはずだ」


 流華の実力は、俺が保証する。

 俺から通常の加護を受けた彼は、諜報に特化しつつも、もはや戦闘能力でも一線級に食い込むほどになっていた。

 無月も、加護(小)にとどまるとはいえ元桜花七侍。

 総合的には流華以上といって差し支えない。

 そこに加えて幽蓮、黒羽、水無月を始めとした精鋭の若手忍者たち。

 彼女たちもそれぞれ加護(微)を持つ上、無月や流華との連携力は高い――はずだった。


 なのに今、その精鋭たちが倒れている。

 息はあるが動けない。

 通常なら考えられない状況だ。


「あいつに……あいつにやられた。かなり強い獣だった。霧が濃くて、不意打ちされて……」


 流華が震える手で、霧に煙る前方を指す。

 その指先が向いた先、確かに何かがいた。


 濃霧が漂う白夜湖の湖畔、その向こう。

 姿はぼやけているが、そこには確かに人が立っていた。

 重く、鋭い。

 流華が言った通り、まるで獣のような荒々しさもある。

 見る者の本能が拒絶を叫ぶような、圧倒的な“存在感”。

 間違いなく、例の豪傑だろう。


 彼の足元には、大きな妖獣の死骸が転がっていた。

 尋常ならざる戦いの痕。

 それすらも背景にしか思えないほど、豪傑の威圧感は強烈だった。

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート