「過ぎたる力は身を滅ぼす。レベル5は無闇に手を出すべきではない。……闇だけにな」
ダジャレまじりの思考が、不意に口元を緩ませる。
こういうところは、まだ人間らしさが残っている証だろうか。
「レベル4で不足だったらレベル5に伸ばすかもしれないから、スキルポイント30の温存は確定として……。あと20は自由に使えるわけだ」
脳内で計算を巡らせる。
もちろん、闇魔法以外には使わないまま温存しておくのもいい。
だが、ただでさえ記憶喪失かつ急激な闇の吸収で自分自身が不安定な今、せめてスキル面ぐらいは万全にしておきたい。
軸足を固める。
それだけで、思考は多少なりとも安定する。
自分を信じるための根拠が欲しいのだ。
「……よし。『桜妖術』をレベル4に強化しておくか。消費スキルポイントは15だ」
血統妖術『散り桜』はかなり強力だ。
殺傷能力はないものの、逆にそれが使いやすい。
血を流さぬ威圧――それはこの世界において、かなり効果的な力だ。
俺は今、桜花藩の藩主だ。
謀反で奪い取った地位なので、恨む者もいるだろう。
いや、いるに決まっている。
誰かの誇りと未来を踏み躙って手に入れたものだからこそ、背中には常に冷たい視線が刺さっている。
その上、湧火山藩、那由他藩、深詠藩、死牙藩、虚空島、翡翠湖藩の六地域を侵略し強引に支配下に置いた。
ミッションを達成し記憶を取り戻すヒントを得るために、俺は数えきれない罪を積み上げた。
今の俺は、さしずめ『大桜花藩』の藩主と言ってもいいかもしれない。
あるいは、『近麗地方の大将軍』とか。
いずれにせよ、ただの謀反者以上に恨みを買っている可能性は高い。
暗殺、奇襲、謀反などといったリスクは、常にある。
「ま、俺はチート持ちだから過剰な警戒は不要だけどな」
各種の知覚系スキルによって暗殺には対処できるし、正面からの襲撃ならば各種の戦闘系スキルを活用して撃破できる。
もし傷を負っても、意識さえ保っていれば治療魔法ですぐに全回復できる。
命の鼓動が続いている限り、体の破損など些末な問題にすぎない。
良くないパターンとしては、意識不明レベルの傷を負わされることか。
しかし、それにしたって治療魔法『リジェネレーション』を常に発動しているためある程度の対処は可能だ。
絶え間なく流れ続ける魔力の糸が、万が一の事態にも即座に反応し、回復の起点となる。
それは保険であり、鎧であり、時に命綱でもある。
「最大の問題は、即死だよな。文字通り、思考も判断も、すべてが即座に終わってしまう……」
記憶はおぼろげだが、この世界には『魂』や『幽霊』が物理現象として実在していたはず。
ならば、肉体的には即死していても、事前に発動していた『リジェネレーション』で蘇生できる可能性はある。
魂がまだ肉体に留まり、魔力の導線が寸断されていなければ、理屈の上では蘇りも夢ではないだろう。
とはいえ、確実ではない。
あくまで希望の話であり、賭けに等しい。
自分自身で事前に魔法実験のようなことをしておくわけにもいかないからな。
結果的には何とかなる可能性はあるとはいえ、やはり最大限に警戒すべきは『奇襲による即死』だ。
目を閉じる間もなく訪れる終焉。
それだけは避けなければならない。
「散り桜は頼りになりそうだ」
淡く、美しく、それでいて凶悪な防御術。
攻撃を受けても、肉体を桜の花びらに変質させて無効化させてしまう。
火魔法『炎精纏装サラマンダー』と比較して攻撃性能に劣る分、消費する妖力――実質的にはMPと同義――が少ない。
効率性の観点から見れば、防御魔法としての運用は極めて優秀だ。
さすがに24時間の発動維持は厳しいだろうが、例えば城下町の視察時に発動を続けるぐらいなら可能だろう。
「……よし、闇魔法と桜妖術を強化したぞ。……ぐっ!?」
不意に頭痛が襲ってきた。
まるで鉄槌で殴打されたかのような鋭い痛み。
視界が揺れ、膝がわずかに崩れそうになる。
やはり、闇魔法を強化した影響か?
抑え込んでいた何かが、奥底から蠢き始めているような不快感。
レベル5まで伸ばすのは保留にしておいて良かった。
これ以上の深淵を覗き込めば、戻ってこられない気がする。
「はぁ、はぁ……。なんのその、これしき……。紅葉たちを守るためなら……」
息を乱しながらも、胸の奥に宿る決意だけは揺るがない。
俺は自身の闇を制御しつつ、紅葉たちを想う。
笑顔を、声を、手の温もりを。
それらが俺を現実に繋ぎとめてくれる鎖だ。
新しいスキルが馴染んだら、紅葉たちの闇のコントロールに挑戦してみよう。
無事に目覚めたら、ミッション報酬で彼女たちにも与えられていたスキルポイントで彼女たちのスキルを強化するのが良さそうか。
彼女たちの潜在能力は俺以上かもしれない。
闇による精神性の強化も相まって、凄まじいほどの有能人材に成長できるはずだ。
そうなれば……。
そうなれば?
俺たちは何をすればいいんだ?
ミッションに従って近麗地方を支配したのはいいとして、その続きとなるような――例えば『全国統一しろ』というようなミッションは出ていない。
示されない道。
導かれない目標。
ある意味で自由だが、同時に不安も覚えてしまう。
何をすればいいのか分からない。
未来が空白であるということは、選択肢が無限であると同時に、責任も無限であるということだ。
「……いや、深く考えるのはよそう。いずれ時間が解決してくれるかもしれない。そのうち新たなミッションが出たり、ふとした拍子に記憶が戻ったり……。最悪の場合でも、紅葉たちと幸せに暮らしていけばいいじゃないか」
小さな安らぎの中にこそ、本当の幸せがある。
英雄譚の果てにあるのは、静かな日常なのかもしれない。
愛すべき仲間たちとなら、きっと幸せな人生を歩んでいけるだろう。
失った記憶に思いを馳せつつも、俺はそう考えるのだった。
レベル40、タカシ=ハイブリッジ(高橋高志)
種族:ヒューマン
身分:男爵、桜花藩藩主
役割:パーティリーダー、クランリーダー
職業:魔法剣士
ランク:B
二つ名:”紅剣”のタカシ
ギルド貢献値:1億7000万ガル
HP:379(291+88)
MP:576(192+384)
腕力:391(170+51+170)
脚力:377(164+49+164)
体力:414(180+54+180)
器用:227(175+52)
魔力:728(182+546)
武器:紅剣アヴァロン
防具:オリハルコンアーマー
その他:光の精霊石(封印中)
残りスキルポイント35
スキル:
ステータス操作
スキルリセット(削除処理中)
ハーレム・スタイル(付与処理中)
加護付与
異世界言語
剣術レベル5
格闘術レベル3
回避術レベル3
気配察知レベル3
気配隠匿レベル3
視力強化レベル2
聴覚強化レベル2
嗅覚強化レベル1
MP強化レベル4
腕力強化レベル2
脚力強化レベル2
体力強化レベル2
魔力強化レベル5
肉体強化レベル3
闘気術レベル4
聖闘気術レベル2
火魔法レベル5
水魔法レベル5
風魔法レベル3
土魔法レベル3
雷魔法レベル3
光魔法レベル1
影魔法レベル3
植物魔法レベル2
幻惑魔法レベル1
重力魔法レベル3
聖魔法レベル4
闇魔法レベル4
治療魔法レベル4
時魔法レベル1
空間魔法レベル4
高速詠唱レベル3
MP消費量減少レベル4
MP回復速度強化レベル4
桜妖術レベル4
精力強化レベル1
夜戦術レベル1
マッサージ術レベル1
水泳術レベル1
水中機動術レベル1
潜水術レベル1
称号:
犬狩り
ホワイトタイガー討伐者
ジャイアントゴーレム討伐者
オーガ・ハーピィの盟友
ガルハード杯ベスト16
ミドルベア討伐者
霧蛇竜ヘルザム討伐者
メルビン杯ベスト8
キメラ打倒者
ブギー盗掘団捕縛者
ゴブリンキング討伐者
聖騎士ソーマの盟友
古代アンドロイドのご主人様
アヴァロン迷宮踏破者
ファイアードラゴンの友
民に寄り添う心優しき騎士爵
盗賊団の天敵
カジノ荒らし
魅惑のマッサージ師
オパンツ戦隊・レッド仮面
ラーグの街のヤバい奴
参級炎精の加護を受けし者
リンドウ古代遺跡探索者
聖女の祝福を受けし者
ダークガーデン首領ナイトメア・ナイト
人魚の加護を受けし者
龍神ベテルギウスに勝利せし者
百華の勇者
古代アンドロイドと交わりし者
ドラゴンと交わりし者
幽霊と交わりし者
クラーケン討伐者
ジャイアントクラーケン討伐者
弐級水精の加護を受けし者
十人斬り
百人斬り
桜花城を攻め落とせし者
闇桜に燃ゆる炎刃
過激ドッキリ実行者
月光を裂く者
裏漆刃の裸漢
奈落に触れし者
(報酬処理中)
ミッション
霧隠れの里の幻影に打ち勝とう
報酬:ハーレム・スタイルのユニークスキル化
スキルリセットの削除
レベル15、深山紅葉(みやまもみじ)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:植物妖術使い
ランク:ー
武器:木刀
防具:村人の服
HP:107(82+25)
MP: 60(46+14)
腕力: 64(49+15)
脚力: 64(49+15)
体力: 68(52+16)
器用: 64(49+15)
魔力: 64(49+15)
残りスキルポイント:80
スキル:
植物妖術レベル4
高速詠唱レベル1
採集術レベル3
栽培術レベル1
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
闇に堕ちし三つ花
レベル15、朝霧流華(あさぎりるか)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:忍者見習い
ランク:ー
武器:苦無(くない)
防具:村人の服
HP:107(82+25)
MP: 64(49+15)
腕力: 60(46+14)
脚力: 68(52+16)
体力: 64(49+15)
器用: 64(49+15)
魔力: 64(49+15)
残りスキルポイント:70
スキル:
気配察知レベル1
気配隠匿レベル1
視力強化レベル1
聴覚強化レベル1
忍術レベル3
窃盗術レベル3
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
闇に堕ちし三つ花
レベル16、柊木桔梗(ひいらぎききょう)
種族:ヒューマン
身分:平民
役割:桜刃三戦姫
職業:剣士
ランク:ー
武器:木刀
防具:道場着
HP:113(87+26)
MP: 65(50+15)
腕力: 73(56+17)
脚力: 69(53+16)
体力: 69(53+16)
器用: 69(53+16)
魔力: 69(53+16)
残りスキルポイント:75
スキル:
剣術レベル5
闘気術レベル4
称号:
タカシの加護を受けし者
桜花七侍撃破者
桜刃三戦姫
闇に堕ちし三つ花
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