【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1735話 全裸なのでもしや

公開日時: 2025年5月2日(金) 12:10
文字数:1,237

「高橋……」


 その名を、彼女はまるで何かを手繰るように呟いた。

 柔らかく、それでいて深く沈み込むように。


「私の探し人とは違うようです。全裸なのでもしや……とも思いましたが、桜花藩に属しているようですし、やはり違うでしょう。筋肉の付き方も少し違いますし……」


 ふとした調子で語られた言葉に、俺は頭の中でツッコミを入れざるを得なかった。

 全裸なのでもしや……って、どんな共通点だよ。

 探し人は変態なのか?

 世も末だな。


「もう行っていいですよ。あなたに用はありません」


 あっさりとしたその物言いに、俺はほんの僅かに唇を歪める。

 まだ話は終わっていない。


 この豪傑、やはり相当な実力者だ。

 その佇まいに揺らぎはなく、声の抑揚にも隙がない。

 感情を削ぎ落とした刃のような言葉に、俺の中の何かが逆撫でされる。

 簡単に引き下がるわけにはいかない。


「そっちに用はなくとも、こっちはあるんだ。……俺の配下にならないか? 今なら、近麗地方の半分をやろう」


 俺の声は低く、しかし確実に空気を切った。

 その提案の奥には、戦略という名の計算が渦巻いている。


 桜花藩の支配域は拡大を続けている。

 ミッションにあった『近麗地方の支配』まで、現状であと半分といったところ。

 紅葉や流華も頼りがいのある存在だが、可能な限りそばに置きたい。

 守りと攻めの均衡を保つには、新たな人材が不可欠だ。

 この豪傑を味方に引き入れることができれば、俺や景春と並び立つレベルの”核”となり得る。


 もちろん、この豪傑を仲間にしたところで、裏切りの芽がないとは言えない。

 だが、俺には『加護付与』というチートスキルがある。

 忠義度を数値で測ることができるのだ。

 裏切りの前兆は把握できる。

 今すぐに測定してみてもいいが……おそらくは時間の無駄だろう。

 現状では、低いに決まっている。


「お断りです」


 やはりそうだ。

 取り付く島もない。

 まるで事前に用意していたかのような即答。

 こちらが言葉を尽くす間もなく、彼女は提案を斬って捨てた。


 言葉だけで屈服させられるとは思っていなかった。

 だが、それにしても――迷いがない。

 まるで、彼女の忠誠心はすでにどこかに預けられているかのようだ。


「……10分だ」


 思わず口を突いた。

 提案ではない。

 これは、宣告だった。


「はい?」


 豪傑が短く言葉を返してくるが、声色に戸惑いはない。

 仮面越しに、俺の目を真っ直ぐに射抜く。

 いい度胸だ。


「10分で勝負を付けよう。俺はお前の全てを凌駕し、屈服させる。お前が納得すれば、俺の配下になってもらう」


 沈黙が落ちる。

 一瞬の間。

 風が止まり、空気が凝固する。

 だが、彼は――微動だにしない。

 まるで最初から、こうなることを予見していたかのように。


「…………」


 言葉はない。

 しかし、俺には分かる。

 こいつは、微塵も動揺していない。


「文句あるか?」


「いえ、いいですよ。その勝負、受けましょう」


 豪傑が仮面越しにニヤリと笑った気がした。

 こちらの挑発に応じるその姿に、俺の中の何かが熱を帯びる。


 こうして、俺と豪傑は10分間の勝負を行うことになったのだった。

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