【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1751話 世界を真っ黒に

公開日時: 2025年5月18日(日) 12:10
文字数:932

「ぐっ……! 【ボルカニック・フレイム】!!」


 俺は、こみ上げる吐き気を抑えながら、上空に向けて火魔法を放つ。

 だが、炎は彼らの前に浮かぶ漆黒の障壁に触れると、まるで吸い込まれるようにして消えた。

 いや、正確には“消された”のではない。

 “取り込まれた”のだ。

 炎の熱すら伝わらないその無慈悲な結界に、背筋が凍る。


「あがっ……!」


 返す刀のように、体内を駆け巡る激痛。

 無理な魔法行使で生まれた隙間に、瘴気が容赦なく流れ込んでくる。

 肺が焼けつくような圧迫感。

 意識が一瞬、飛びかける。


『ふふ……。かわいそうに。なまじ力と知恵があるだけに、そうして苦しむことになる』

『この世界に、色なんて不要。光も要らない。ただ、闇だけがあればいい。手始めはこの白夜湖だ』


 空に浮かぶ双子らしき存在が、冷たい声で囁く。

 彼らは黒い翼をゆっくりと広げ、闇の空に馴染むように佇んでいた。

 アレは『人』なのか?

 あまりにも歪な存在感。

 形容しがたい不気味さが、皮膚の下にまで染み込んでくる。


『さあ……。世界を真っ黒に――』

『染めてあげよう』


『『【黒耀曼荼羅(こくようまんだら)】』』


 その宣言と同時に、双子は両手を前に突き出した。

 掌から放たれる黒い波動は、空間そのものを揺らし、地の理すら歪ませる。

 まるでこの世界が、黒のペンキで再描写されるような錯覚すら覚えた。

 この軌道は……マズい!!


「ミティ! 流華!! みんな、逃げろぉおおぉおおっ!!」


 喉が裂けそうになるほどの叫び。

 だが、声は間に合わない。

 黒の波動が速度を増して地を這い、空気そのものを染めていく。


 たとえ今から全力で逃げたとしても――無理だ。

 あの闇には拡散性がある。

 まるで俺の全力火魔法のように、広範囲に及ぶ力だ。


「っ!!」


 俺は覚悟を決める。


 ――チートのおかげで強くなりまくった俺。

 何らかの面倒事に巻き込まれて記憶喪失にはなってしまったが、チート自体には感謝しかない。

 紅葉や桔梗という美少女と仲良くなれたし、流華という弟分もできた。

 ミティという最愛の妻もいる。

 激痛と共にまだ思い出している最中ではあるが、他にも愛する女性たちがいたように思う。

 いずれも、俺には過ぎた者たちだ。


 俺が得た、身の丈に合っていないチート能力。

 それは、こんなときにみんなを守るためにあったのだ。

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