【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1736話 タカシ vs ミティ

公開日時: 2025年5月3日(土) 12:10
文字数:1,082

「さぁ、勝負です!」


 仮面越しに響く豪傑の声音は、曇りなく晴れた空のように清々しかった。

 対する俺も、自然と口元が緩む。


「来い、美しき帝王」


 俺はあえて受けに回る。

 無論、油断しているわけではない。

 初手から全力でねじ伏せるのも一つの手だが、それでは相手の奥行きを見誤るかもしれない。

 力だけでは測れない何かを、この男は隠している気がした。

 だからこそ、じっくりと底を探りたかった。


 豪傑の得物は、見るからに重たそうな巨大なハンマーだ。

 鉄の塊をそのまま削り出したかのような無骨な造形だが、手入れは行き届いており、使い込まれた武器特有の禍々しさが滲み出ている。

 背丈は小さいが、仮面によって表情が読めないことで独特な威圧感を放っていた。


 腰には革袋。

 その気配は妙に生温かく、ただの道具ではないことを物語っている。

 妖具――何らかの異能を宿す器か。


 警戒を強める俺の鼻先を、乾いた土の匂いが掠めた。

 ざらり、と足場を踏みしめる重い音。

 地面がわずかに振動したその瞬間、俺の神経は一点に集中する。


 豪傑が短く息を吐き、腰の革袋へと手を突っ込む。

 その動きに迷いはない。


「ふんっ!」


 豪傑は拳ほどの石を掴み、それを全力で投擲してきた。

 空気を裂く、鋭い音。

 飛来する石の軌道は速く、まるで矢のように一直線だ。

 直撃すれば骨に響くだろう。


 俺は咄嗟に身をひねり、ぎりぎりのところで石を避けた。

 しかし、次の瞬間、視界に黒い影が飛び込んでくる。

 回避した先には、既に豪傑が肉迫していたのだ。


「どりゃあっ!!」


 怒号と共に、振り下ろされるハンマー。

 その軌道は重力すら巻き込むかのように重く、速い。

 全身に危険信号が鳴り響く中、俺は反射的に両腕を交差させて防御を取った。


「うおっ!?」


 俺は思わず声を上げる。

 視界を埋め尽くすほどの巨大なハンマーが迫ってきたのだから、それも当然だろう。

 しかし、よく考えれば身構える必要はなかった。


 ひらり、ひらりと、桜の花びらが舞い散る。

 攻撃を受けた箇所に痛みはない。

 傷一つつくこともなく、ただ桜が舞うのみだった。


 花びらたちは光を帯びて回転し、元通りに俺の体を再構成していく。

 今は全裸なので関係ないが、肉体だけではなく装備も再構成される優れた妖術だ。

 その様子を、豪傑は目を見張って見ていた。


「面妖ですね……。その花びらは何ですか?」


 豪傑がぽつりと呟く。

 俺は苦笑しながら、答えた。


「桜花藩の秘伝さ。まさか、これほどすぐに見せることになるとは思わなかったぞ。いい一撃だ」


 言いながら、自分でも意外だった。

 普段ならここまで早く切り札を見せることはない。

 この技を序盤から引きずり出されるほど、豪傑は強かったのだ。

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