【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1743話 氷縛・白蓮零華

公開日時: 2025年5月10日(土) 12:10
文字数:1,200

「バカな……! あの拘束を解いたのか……?」


 思わず声が漏れた。

 俺の膨大な魔力を惜しみなく使い、幾重にも強化した岩の枷。

 それを破るには相当な出力が必要なはずだった。


「当然です。私は、大切な人からいただいた絶対的な『力』があります。この程度の拘束で、私は縛れません」


 堂々とした声音だった。

 言葉に迷いがない。

 声の底に宿るもの――それは誇り。

 誇りが彼の存在を芯から支えている。


 大切な人……か。

 ふと、胸の奥が軋んだ。

 彼にも誰かがいるのか。

 恋人か、家族か、あるいは師か……。


 いや、そんなことを考えている場合ではない。

 俺は気を取り直し、攻め方を変えることにする。


「なら、これはどうだ!? 【氷縛・白蓮零華(びゃくれんれいか)】!!」


 俺は水魔法を発動した。

 豪傑の周囲にひやりとした空気がまとわりつき、一瞬にして霧のような白が辺りを覆った。


 咲き誇る白蓮のごとき氷結の罠。

 これは、『岩石封じ』と並んで桜花藩に来てから開発した新技のひとつだ。

 表向きには『水魔法』ではなく『水妖術』という建前にしてある。

 和風の名を冠したのもそのため。


 俺がヤマト連邦の外から来た者だと、そう簡単に知られるわけにはいかない。

 我ながら完璧な偽装だ。

 だが――


「効かないと言っているでしょう。ぬぅんっ!!」


 鋭い気合と共に、彼が腕を振る。

 パキンッ!

 乾いた音が空気を裂き、次の瞬間、雪蓮華の氷が砕け散った。

 凄まじい力だ。


「やるな」


「あなたこそ。やけに多彩な妖術を使いますね……とても疲れます」


「俺も同じだ。工夫を凝らした自慢の搦め手を……これほどまでに突破されたことはない。ストレスだ」


 俺は嘆息混じりに言う。

 殺生に関して、俺は呪いを受けている。

 そのため、相手との力量差に応じて、適切な戦闘方法を選んで安全に打ち倒す必要がある。

 搦め手中心の戦闘が、格下を相手取るときの俺の戦闘スタイルだ。


 だが、彼には通じない。

 誤魔化しも策も、通用しない。

 だとすれば、次の手を考えねばならない。


「私を懐柔できるなど、思わないことです。さっさと全力を出しなさい。――【ジャガー・メテオ】!!」


 警告ではなかった。

 宣告だった。

 彼の声に宿るのは、もはや容赦なき覚悟だ。


「ちっ……」


 無数の投石が空から襲ってくる。

 文字通りの岩の雨だ。

 妖術『散り桜』で無効化できる――はずだ。

 しかし、頭痛に伴う制御の乱れが、今も尾を引いている。

 ……当たっても大丈夫か?

 一抹の不安がある。


「念のため避けおくか。……ん?」


 ほんの一歩、体の重心を左へ傾けた瞬間だった。

 空気が裂けるような鋭い声が、耳を打った。

 まるで待っていたかのように、まっすぐ、迷いなく。


「動きは読めてます! 妖術にあぐらをかいて、読み合いはお粗末のようですね!!」


 一拍、呼吸が詰まる。

 顔をしかめ、言葉の意図を理解した瞬間には、すでに遅かった。

 直感が告げている。

 見切られた――そう、完全に、だ。

 豪傑の両腕が唸りを上げる。

 まるで雷鳴の前触れのようだ。

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