【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1752話 闇の極大螺旋

公開日時: 2025年5月19日(月) 12:10
文字数:1,048

「せめて仲間たちだけは守ってみせる……! 【闇の極大螺旋】!!!」


 俺は叫ぶように詠唱し、闇の魔力を叩きつけるようにして解き放った。

 胸の奥から絞り出したその一言に、空気が震え、地面に走った亀裂から黒煙のような魔力が噴き上がる。

 視界が歪み、世界の色が褪せていく。

 闇が、あらゆるものを呑み込むように広がっていく。


 これは、瘴気を吸収する技だ。

 まるで深淵の底から立ち昇る渦巻きのように、黒い魔法陣が空中に展開される。

 重力すらも狂ったように引き寄せられている感覚に、足が震えるのを必死に堪えた。


 今の俺なら、かなりの広範囲を吸収できる。

 いや、そうでなければ意味がない。

 拡散性のある闇魔法も、俺が吸収しきってしまえば問題ない。

 全てを、この身一つで受け止める覚悟だ。


「タカシ様ぁっ!!」


 耳をつんざくようなミティの叫びが飛ぶ。

 声の震えに、彼女の恐怖と哀しみが滲んでいた。


「兄貴ぃいぃいっ!!」


 続けざまに、流華の絶叫。

 鼓膜に焼き付くようなその悲鳴に、俺はかすかに微笑んだ。

 心が、揺れる。


 すまない、みんな……。

 本当は、もっと一緒にいたかった。

 ミティや流華たちだって、事情を話せばきっとお互いに仲良くなれただろう。

 みんなで桜花城の天守閣でゆっくりしたり、サザリアナ王国に招待したりなんて未来もあったはず。


 だがもう、痛みで意識が朦朧としてきた。

 全身を針で突かれるような激痛が走る。

 血管を這う闇の瘴気が、肉体の限界を超えて内側から俺を蝕んでいる。

 俺はもはや意識を保つことすら難しくなりつつあった。

 瞼が重く、視界が霞む。


「思い出を……ありがとう……」


 かすれた声で、誰にともなく呟いた。

 脳裏に浮かぶのは、ミティの笑顔、流華の生意気な表情、仲間たちの喧騒。

 俺の居場所だった。

 だからこそ、俺がここで守らなければならない。

 最後の気力を振り絞って闇魔法を強めた。


「うおぉおおおおおっ!!」


 声が喉を裂く。

 魂の叫びだった。

 全ての瘴気が、俺の体内に向かって吸収されてくる。

 皮膚が焼けるように熱い。

 内臓が捻じ曲がる感覚に歯を食いしばる。


『なっ!?』


 思わず漏れる、双子の一人の動揺。


『ば、馬鹿なっ! この白夜湖を黒く塗り潰すはずの瘴気が……猿一匹ごときに!?』


 もう一人の声が続く。

 想定外だったのだろう、彼らにとっても。

 この状況、この選択、この執念――すべてが。


 なら、ここは俺の勝ちとも言える。

 残るのはわずかな誇りと、仲間への想いだけだった。


「ふふ……ざまあみやがれ……。みんな、あとを頼む……」


 俺は不敵な笑みを浮かべると、そのまま意識を失ったのだった。

【お知らせ】


以前にもお知らせしました通り、投稿頻度と1話あたりの文字数を変更します!


現状:毎日更新(1000字前後)

今後:隔日更新(2000字前後)


明日の1753話から2000字前後の更新です。

それ以降は5/22→5/24→5/26→……の更新予定となります。


引き続き、よろしくお願いいたします!

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