【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1738話 かぺ

公開日時: 2025年5月5日(月) 12:10
文字数:1,341

「っ!!」


 かわしきれず、俺の頭部が仮面ごと吹き飛ばされる。

 ダメージはない。

 桜と化して、物理攻撃は無効化されている。


 ……しかし、やはり凄まじい威力だな。

 腕力が特に優れているが、決してそれだけではない。

 身体全体をしならせ、重心移動まで計算した投擲。

 無駄のないハンマーのモーション。

 俺の行動を先読みした接近。

 戦い慣れている者の動きだった。


 だが、同時に引っかかる点もある。

 俺が反撃の素振りを見せていないという理由もあるだろうが、豪傑は自身の防御を意識していない。

 大きめの外装を纏ってはいるが、防具の類は最低限。

 本人の回避能力も、さほど高くはない様子だ。


 そして、攻撃方法も物理に特化しすぎている。

 懐の妖具は、アイテムバッグの類だろう。

 中に大量の石が入っているようだが、あくまでそれだけだ。

 属性攻撃系の妖具はないし、妖術の素養も高くないと見える。

 俺の『散り桜』を突破するための工夫も、皆無だ。


 純粋な攻撃一辺倒。

 まるで、個人戦ではなく、誰かと連携して戦うことを前提に成長してきたかのような……。

 そんな不自然さを感じさせる。


「ぐっ……!?」


 ズキッ!!!

 不意に、頭を針で刺されたような痛みが走った。

 脳が軋む。

 まずい。

 こんな強敵を前に、思考に耽る余裕はない。


 今はただ、血統妖術『散り桜』を維持すればいい。

 それだけで、俺に敗北はないのだ。

 戦いに集中しよう。

 胸の奥で静かに、だが強くそう決意した。

 頭部と仮面の修復を終えた俺は、豪傑に向き直る。


「……一つだけ言っておく。そんな愚直で単調な攻撃では、絶対に俺は――」


「【ジャガー・メテオ】!!」


 声を被せるように、怒号が飛ぶ。

 俺の言葉を遮った。

 間髪入れず、無数の石が矢のように俺に襲いかかる。


 当然、俺は桜化している。

 ダメージはない。

 しかし、視界一面を覆う石礫の嵐に、思わず肩を竦める。


「レオ……ボンバー!!!」


 怒号が再び耳を劈く。

 直後、大地が大きく陥没した。

 湖の水が、勢いよく流れ込んでくる。

 空気が冷たく湿り気を帯び、土埃がむせかえるように舞った。


 相変わらず、俺にはノーダメージだ。

 とはいえ、至近距離で受けるその迫力には、否応なく圧倒されるものがある。

 俺は意識して口元に余裕の笑みを浮かべ、静かに言い放った。


「無駄だ」


 その一言が、空気を震わせた。

 ギリリと奥歯を噛み締める音が耳に届く。


「っ! その花びら、厄介ですね……」


「そうだろうとも。お前のような筋肉バカがどうあがこうとも、この俺には絶対にかぺ」


 不意に、言葉が詰まった。

 豪傑のハンマーが、俺の顔面を直撃したからだ。

 もちろん、桜化しているためダメージはない。

 だが、勢いだけは凄まじく、言葉の流れがぶった切られた。


「……”かぺ”? さっきから何を言いたいのですか? 言葉も満足に知らない、おマヌケさん」


 顔面が熱くなる。

 物理的な痛みではない。

 これは紛れもなく――屈辱だ。


「…………!!!」


 噛み殺した怒りが、喉の奥で脈打つ。

 この野郎……。

 心の内で呟きながら、無意識に拳を握り締める。


 正直、かなりイラッとした。

 喉元まで込み上げる怒号を、辛うじて飲み込む。

 今は熱くなるべき時ではないのだ。

 ここで感情に呑まれたら、それはすなわち広い意味での敗北を意味する。


 この戦いの目的。

 それは格の違いを見せつけ、従わせること。

 そのためには――

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