「天上人どもの行方が気になるが、とりあえずは問題ないか。翡翠湖の方も、ある程度は似たようなものだったしな……」
俺はふと、桜花藩から見て北西にあった巨大な湖の幻影を思い浮かべる。
そこには、クシナダという大和神がいるという迷宮がある。
その神力によって独立性を保っていた地域だ。
クシナダの神力に対する新たな適性者が出た――そんな情報を得た俺は紅葉や樹影を派遣して警戒していたのだが、その適性者とやらはあっさりと去っていったらしい。
向かった先は東方。
おそらくは、中煌地方や漢闘地方あたりからの武者修行者だったのだろう。
将来的には警戒すべき相手である。
だが、目下のところは関係ない。
新たな適性者が出たことにより翡翠湖の神力が弱まったという点では、むしろ一時的には追い風にすらなる。
俺は闇の力と共に翡翠湖へ突撃し、あっさりと支配下に置くに至った。
「終わってみれば、死牙藩の方が難易度が高かったな。あの豪傑はかなり手強かった気がする。あまり覚えていないが」
俺は呟く。
唇の端にわずかな笑みを浮かべながら、視線を空の彼方へと泳がせる。
だが、その笑みには確信も実感もなかった。
ただ、そうであった「気がする」だけ。
まるで濃霧の中を手探りで歩いているような感覚が、俺の記憶の輪郭を曖昧にしていた。
思えば、あの戦いの最後、俺は闇を過剰なペースで吸収していた。
苦痛の代償として得たものは、力だけではなかった。
得体の知れない深い渇きと、ぽっかりと空いた記憶の空白だ。
俺は元より記憶喪失だった。
再度の記憶障害となった今回、全てを忘れてしまったわけではない。
紅葉、流華、桔梗たちのことはちゃんと覚えている。
では、何を忘れたのか?
それは、あの白夜湖で起きた出来事だ。
その記憶だけが抜け落ちている。
あのとき、何か大切なものを思い出していた気もした。
しかし今、それが何だったのか影すら掴めない。
気のせいだったのか、本当に大切な何かだったのか。
その判断すら、今の俺にはつかない。
あの場にいた当事者、流華や無月から事情を聞きたかった。
彼ら彼女らの記憶が確かなら、何か手がかりが得られたかもしれない。
だが、流華たちは桜花藩への帰路、急に倒れた。
まるで、俺の内から漏れ出した闇が、無垢な者たちを蝕んだかのように。
その瞬間、俺は初めて、自身の変化が周囲に影響を及ぼしている現実に気づかされた。
それ以降、俺は自分から放たれる気配や闇の濃度に敏感になり、意識的に仲間との距離を取るようになった。
だが、それでも感染は防げなかった。
最も近しく、最も俺を信頼してくれていた紅葉と桔梗――彼女たちまでもが、俺の影響で倒れてしまったのだ。
「まさかあんなことになるとは……」
彼女たちは今、桜花城の一室で静かに眠っている。
額にうっすらと汗を浮かべ、浅い呼吸を繰り返しながら。
俺はその寝顔を思い出し、胸の奥にかすかな痛みを覚える。
だが、それでも思うのだ。
闇は素晴らしい。
拒絶反応に見えるその症状も、適応の過程に過ぎないはずだ。
闇を受け入れた者は、以前よりも思い切りの良さを手にし、より強靭な存在へと進化する。
それが俺の、いや、俺たちの信じる道だ。
死牙藩で何があったのか。
その全貌を知るには、流華たちが目覚めてから聞けばいい。
焦る必要はない。
全ては、然るべき時に明らかになる。
「さて、問題はここからどうするかだな……。報酬で得たスキルポイントの使い道は、早めに決めておくべきか」
俺は低く呟き、静かに自身のステータス画面を呼び出した。
煌めく数字の羅列、その中に新たなスキルポイントが表示されているのを確認する。
先ほどのミッション達成によって得た成果だ。
これをどう使うか、それが次なる課題だった。
記憶が正しければ、このスキルポイントは俺だけでなく、加護を受けた者にも分配されているはず。
つまり、紅葉、流華、桔梗の三人にも。
それは大きな意味を持つ。
俺は既に強者の域にいる。
今さらスキルポイント20程度で劇的な変化は望めない。
だが、彼女たちには違う。
彼女たちの可能性はまだ伸びしろに満ちている。
闇を受け入れ、己の中の迷いを削ぎ落としたとき、彼女たちは新たな領域に至るだろう。
より鋭く、より強く、そしてより頼れる存在に。
俺たちが今後迎える戦いにおいて、彼女たちの成長は何よりの武器となるはずだ。
「すぐに達成できそうなミッションはもうないし……。とりあえず、桜花城に帰るか」
俺はそう呟く。
闇に濡れた空気の中、ゆるやかに歩を進める。
本拠地である桜花城の静けさの中で、俺は心を整え、次なる一手を練るつもりだ。
紅葉たちの中で闇が落ち着くのを待つ。
それまでは、俺の闇が悪影響を及ぼさぬよう、慎重に距離を保つ必要がある。
だが、いずれ馴染んだなら、もう心配はいらない。
心から、たっぷりと仲良くできる。
そう信じている。
「ふふ……。楽しみだ」
俺はそう呟くと、桜花城への帰路につくのだった――。
レベル40、タカシ=ハイブリッジ(高橋高志)
種族:ヒューマン
身分:男爵、桜花藩藩主
役割:パーティリーダー、クランリーダー
職業:魔法剣士
ランク:B
二つ名:”紅剣”のタカシ
ギルド貢献値:1億7000万ガル
HP:379(291+88)
MP:576(192+384)
腕力:391(170+51+170)
脚力:377(164+49+164)
体力:414(180+54+180)
器用:227(175+52)
魔力:728(182+546)
武器:紅剣アヴァロン
防具:オリハルコンアーマー
その他:光の精霊石(封印中)
残りスキルポイント65
スキル:
ステータス操作
スキルリセット(削除処理中)
ハーレム・スタイル(付与処理中)
加護付与
異世界言語
剣術レベル5
格闘術レベル3
回避術レベル3
気配察知レベル3
気配隠匿レベル3
視力強化レベル2
聴覚強化レベル2
嗅覚強化レベル1
MP強化レベル4
腕力強化レベル2
脚力強化レベル2
体力強化レベル2
魔力強化レベル5
肉体強化レベル3
闘気術レベル4
聖闘気術レベル2
火魔法レベル5
水魔法レベル5
風魔法レベル3
土魔法レベル3
雷魔法レベル3
光魔法レベル1
影魔法レベル3
植物魔法レベル2
幻惑魔法レベル1
重力魔法レベル3
聖魔法レベル4
闇魔法レベル3
治療魔法レベル4
時魔法レベル1
空間魔法レベル4
高速詠唱レベル3
MP消費量減少レベル4
MP回復速度強化レベル4
桜妖術レベル3
精力強化レベル1
夜戦術レベル1
マッサージ術レベル1
水泳術レベル1
水中機動術レベル1
潜水術レベル1
称号:
犬狩り
ホワイトタイガー討伐者
ジャイアントゴーレム討伐者
オーガ・ハーピィの盟友
ガルハード杯ベスト16
ミドルベア討伐者
霧蛇竜ヘルザム討伐者
メルビン杯ベスト8
キメラ打倒者
ブギー盗掘団捕縛者
ゴブリンキング討伐者
聖騎士ソーマの盟友
古代アンドロイドのご主人様
アヴァロン迷宮踏破者
ファイアードラゴンの友
民に寄り添う心優しき騎士爵
盗賊団の天敵
カジノ荒らし
魅惑のマッサージ師
オパンツ戦隊・レッド仮面
ラーグの街のヤバい奴
参級炎精の加護を受けし者
リンドウ古代遺跡探索者
聖女の祝福を受けし者
ダークガーデン首領ナイトメア・ナイト
人魚の加護を受けし者
龍神ベテルギウスに勝利せし者
百華の勇者
古代アンドロイドと交わりし者
ドラゴンと交わりし者
幽霊と交わりし者
クラーケン討伐者
ジャイアントクラーケン討伐者
弐級水精の加護を受けし者
十人斬り
百人斬り
桜花城を攻め落とせし者
闇桜に燃ゆる炎刃
過激ドッキリ実行者
月光を裂く者
裏漆刃の裸漢
奈落に触れし者
(報酬処理中)
ミッション
霧隠れの里の幻影に打ち勝とう
報酬:ハーレム・スタイルのユニークスキル化
スキルリセットの削除
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