【コミカライズ】無職だけど転移先の異世界で加護付与スキルを駆使して30年後の世界滅亡の危機に立ち向かう

~目指せ! 俺だけの最強ハーレムパーティ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
猪木洋平@【コミカライズ連載中】

1741話 これでいいのか?

公開日時: 2025年5月8日(木) 12:10
文字数:1,355

「くっ!?」


 寸前で避け、もがくように体を捻って脱出する。

 地面に深く刻まれた拳痕。

 危うく、潰れたトマトみたいになるところだった。

 妖術『散り桜』の制御が不安定になっている今、あれを受けていたらヤバかった。


 やはり、豪傑のパワーは凄まじい……。

 桜花七侍の巨魁や金剛すら、軽く凌駕しているんじゃないか?

 まるで、暴風そのものと戦っているかのようだ。


「間一髪で避けましたか……。しかし、体勢を立て直す時間は与えませんよ! はあああぁっ!!!」


 空気が再び振動し、風が二度目の怒りを上げた。

 彼は止まらない。

 目の前の敵を打ち砕くまで、彼の拳は休まない。


「……ふん、落ち着いて対処すればどうとでもなる。この期に及んで『力』頼みとはな……。いい加減に学べ」


 俺は唇を歪めて呟いた。

 豪傑の戦い方は一貫している。

 圧倒的な筋力、すさまじい膂力で押し通す。

 シンプルでわかりやすい分、隙がなく強力だ。


 だが、それはあくまで格下が相手のときの話。

 俺のような格上には通じない。

 搦め手を用いるか、あるいは集団戦に持ち込んで撹乱するか。

 何らかの工夫が必要だ。


「【侵掠すること火の如し】!!」


 号令のように力を込める彼の声。

 その瞬間、空気の密度が変わった。

 風が止まり、音が引き絞られ、時さえもほんの一瞬たじろいだように思える。

 目に見えぬ圧力が大気を押し潰すように満ちていく。


「やっば! なんか、腕が大きくなってない!?」


 観戦している幽蓮の声が聞こえてきた。

 恐怖と驚きが交じった声だった。


 彼女の視線の先には、豪傑の右腕。

 確かに膨張している。

 いや、膨張というよりも、圧倒的な闘気と妖気が形をとって、腕を“拡張”させているのだ。

 純粋な幻覚ではなく、しかし彼自信の腕が急成長したわけでもない。

 それは闘気の鎧のような、濃密な殺意の塊だった。


 ハンマーのような武器だけに頼ることなく、素手でさえ破壊を成し得る。

 骨を砕き、肉を裂き、地を穿つ。

 それが可能であるという確信が、見る者全てに伝わる。

 その腕は既に一個の兵器だった。


「【エレファント・バン】!!!」


 技名と共に、巨大な腕が空気を裂いて突き出された。

 速い。

 大きい。

 そして、間違いなく重い。


 避けるか、受けるか。

 一瞬の判断を迫られる。

 しかし、俺は嘲るように微笑んだ。


 ――それぐらいなら、俺もできる。

 純粋な腕力だけなら豪傑に分があるかもしれない。

 だが、魔力、闘気、妖力によるブーストまで含めれば、俺が負けることはない。


「ふんっ!!!」


 全身の筋肉が軋みを上げた瞬間、俺の拳が膨れ上がり、空間を殴った。

 衝突音が耳をつんざく。

 豪傑の“エレファント・バン”を、こちらの全霊をもって受け止め、押し返す。


「おお……! 主のはもっと大きいぞ!!!」


 無月の声が背後から届いた。

 その声が、確かに力になった。

 心が燃える。

 俺はこの一撃に、仲間の誇りと信頼も背負っているのだ。


「うぅ……!」


 豪傑が歯を食いしばり、踏ん張る。

 だが、流れはすでにこちらに傾いていた。


「あぐっ!!」


 抵抗虚しく、豪傑に俺の拳が直撃した。

 彼は弾け飛び、地面を転がる。

 その体が土を抉り、砂煙を巻き上げながら、ついに止まった。


「これでいいのか? ”エレファント・バン”」


「…………!! がふっ!」


 豪傑が苦悶の声を漏らす。

 これで勝負あっただろう。

 さぁ、彼を配下に迎え入れるべく”交渉”を頑張ろうか。

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