太陽のブレイヴ

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太陽の旅立ち編

プロローグクエスト 小さな太陽

公開日時: 2020年11月25日(水) 18:00
文字数:870

 目が覚めると赤ん坊は山奥に捨てられていた。

 大雨に打たれ体は冷たい。

 必死に手足を動かす。辺りを見渡すが周りには誰もいない。


 どうしてこんなところで捨てられてるのか、赤ん坊は知る由もない。


 不慣れに声を出すと白い息が出る。

 体は冷え切り目は虚ろになっていた。誰か助けて。

 このまま死んじゃうのかな。赤ん坊は必死に助けを求める。


 死という恐怖が脳裏をよぎり、目からは涙が溢れそうになってしまう。

 力がなくなりそのまま目を閉じようとした瞬間だった。


「なぜこんなところに赤ん坊が……?」

 ぼやける視界に映ったのは一人の老人だった。

 赤ん坊に急いで近寄ってそっと抱きかかえる。

 包み込んでくれた両手は暖かい 。

 赤ん坊の心や体も癒してくれるようだ。


「安心しなさい、もう大丈夫だ。誰がお前さんを捨てたかは知らないが、ひとまず私の家へ行こう」


 老人の優しい言葉を聞き、赤ん坊は嬉しくなる。

 抱きしめてくれる体は暖かくなり、元気を取り戻して行く。


「こんな大雨に打たれて寒かっただろう。 この事を村の者にも知らせなくては……そうだ。帰る前にお前さんの名前を決めなくてはな。さて、どのような名前にするか ……」


 名前を決めてくれると知って、赤ん坊は笑う。

 その笑顔が引き金となったのか、大雨は嘘だったかのように降り止む。

 雲は徐々に遠くへ行き、太陽が姿を現す。


「急に雨がやむとは珍しい。あんなに太陽も輝いて……そうだ!」


 老人は閃いたかのように、 赤ん坊へ顔を近づける。


「 今、元気に輝く太陽を見て思いついた。 今日からお前さんの名前は――サンだ! かつてこの世界を救った友のように明るい子へと育っておくれ」


 赤ん坊は両手を伸ばして甘える。

 老人は優しい笑顔を見せ、赤ん坊の頭を撫でてくれた。


「まるで太陽のような笑顔だ。さあ、私の家へ帰ろう。これから私が、お前さんを大切に育てていくからね」


  赤ん坊を抱っこして、老人は森の奥へと進んで行く。

 これから老人の下で生活していく。赤ん坊の楽しみは止まらない。

 老人の顔を見て赤ん坊は――。


「あーあー」( ありがとう)


 赤ん坊は嬉しそうに笑い、進む道を真っ直ぐに見つめるのだった。

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