目が覚めると赤ん坊は山奥に捨てられていた。
大雨に打たれ体は冷たい。
必死に手足を動かす。辺りを見渡すが周りには誰もいない。
どうしてこんなところで捨てられてるのか、赤ん坊は知る由もない。
不慣れに声を出すと白い息が出る。
体は冷え切り目は虚ろになっていた。誰か助けて。
このまま死んじゃうのかな。赤ん坊は必死に助けを求める。
死という恐怖が脳裏をよぎり、目からは涙が溢れそうになってしまう。
力がなくなりそのまま目を閉じようとした瞬間だった。
「なぜこんなところに赤ん坊が……?」
ぼやける視界に映ったのは一人の老人だった。
赤ん坊に急いで近寄ってそっと抱きかかえる。
包み込んでくれた両手は暖かい 。
赤ん坊の心や体も癒してくれるようだ。
「安心しなさい、もう大丈夫だ。誰がお前さんを捨てたかは知らないが、ひとまず私の家へ行こう」
老人の優しい言葉を聞き、赤ん坊は嬉しくなる。
抱きしめてくれる体は暖かくなり、元気を取り戻して行く。
「こんな大雨に打たれて寒かっただろう。 この事を村の者にも知らせなくては……そうだ。帰る前にお前さんの名前を決めなくてはな。さて、どのような名前にするか ……」
名前を決めてくれると知って、赤ん坊は笑う。
その笑顔が引き金となったのか、大雨は嘘だったかのように降り止む。
雲は徐々に遠くへ行き、太陽が姿を現す。
「急に雨がやむとは珍しい。あんなに太陽も輝いて……そうだ!」
老人は閃いたかのように、 赤ん坊へ顔を近づける。
「 今、元気に輝く太陽を見て思いついた。 今日からお前さんの名前は――サンだ! かつてこの世界を救った友のように明るい子へと育っておくれ」
赤ん坊は両手を伸ばして甘える。
老人は優しい笑顔を見せ、赤ん坊の頭を撫でてくれた。
「まるで太陽のような笑顔だ。さあ、私の家へ帰ろう。これから私が、お前さんを大切に育てていくからね」
赤ん坊を抱っこして、老人は森の奥へと進んで行く。
これから老人の下で生活していく。赤ん坊の楽しみは止まらない。
老人の顔を見て赤ん坊は――。
「あーあー」( ありがとう)
赤ん坊は嬉しそうに笑い、進む道を真っ直ぐに見つめるのだった。
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