002
「えっと、どこだぁ?」
裕夜は、あと1分という時間のなか、筆箱を探す。昼休みに、本を借りに来た裕夜は、ついでに課題をやってしまおうと、席に着いたのだ。
「だから多分、この辺に……」
「あら、探し物?」
授業が始まるっていうのに、誰だろう……いや、今はそれどころじゃない!
「はい、そうなんです。筆箱を無くしてしまって……」
「筆箱って、これかしら?」
そう、女の人がいうと、裕夜の目に前に筆箱が現れた。
女の人が、見つけてくれたのか!
ありがとうございます、そう言おうとして、顔を上げると……
ゆゆ、幽霊……!?
「さっき、カウンターに持ってきてくれた人がいてね。君のだったんだ」
「あ、ありがとう、ございます……」
何か言わなくては、とてもまずいのではと思い、とりあえず、お礼を口にする。
「あ、そうそう。君、異世界って知ってる?」
……!? これは、まさか……
「私が、連れていってあげるよ」
あの噂は、本当だったのか!!
女の人は、ニタニタと笑う。その女の人は、裕夜と同じくらいの、女子中学生だった。きれいに整えられた、黒髪。凛とした瞳。
あれが、幽霊? 嘘だろ……だってあれは……!
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